第23話 『守れなかった約束』

 僕は約束をしていた。


 そう、自分を救ってくれたあの人と、ジェノさんと約束していたんだ。

 決して、今回の依頼のことは他の人には喋らないって。


 でも、僕は我慢できなかったんだ。


 だって、みんなが言うんだもの。

 お爺ちゃんも、お婆ちゃんも、友達も、友達のお母さんたちも。


『仇を取ってくれた、自警団にしっかりと感謝しないといけないよ』って


 違うのに。

 僕を救ってくれたのは、自警団の人たちじゃあないのに。


 僕を救ってくれたのは、『冒険者』だ。

 冒険者のジェノさんなのに……。


 我慢をした。約束を守ろうとした。


 でも、それでも、許せなかったんだ。

 ジェノさんのことを隠して、自分達が怪物を倒したと言っている自警団の人たちのことが、どうしても。


 だから、僕はついお爺ちゃんとお婆ちゃんに言ってしまったんだ。


 あの怪物を倒したのは、ジェノさんと僕なんだって!


 必死に、僕は何度も何度も、本当のことをお爺ちゃんたちに話した。


 最初は信じてもらえなかったけれど、何度も言ううちに、次第にお爺ちゃんは難しい顔をし始めて、お婆ちゃんは怒り出してしまった。



 ……僕は、馬鹿だ……。


 この時の僕は、自分のしたことが、ジェノさんに迷惑をかけることになるって分かっていなかった。


 本当に、僕はなにも、分かっていなかったんだ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る