第24話 巫女のお告げ
フルヴラとジャロックは
「兄貴……は、速い……!」
老いたジャロックはフルヴラに手を取られて走る。もちろん二人とも『
自分の脚が自分のものではないように動いていて気持ち悪い。
「あと少しだ。それから……」
「なんだい?」
「なんでもない」
フルヴラは「兄貴と呼ぶな」と言いかけて言葉を呑んだ。マーサ婆さんの前なら、兄貴と呼ばれても差し支えあるまい。
二人にとにかくすぐに自分の元へ来いと言ったのは彼女だ。
久しぶりにマーサの声を聞いてフルヴラは元気が
引きずられるように連れてこられたジャロックは疲れ果ててその場にへたり込む。
それを支えながら、フルヴラはドミタナス一族の巫女の家の前に立った。軽くノックすると、魔女の顔をしたノッカーがギョロリと目を
『ここを誰の家か知ってて来たのかい⁈』
マーサに似たしわがれ声で、ノッカーはカタカタと話し出す。たいていの者はこの生きたノッカーを見ただけで恐れをなして逃げていくものだ。だがフルヴラは幾度か目にしている。
「こんな夜中だが約束はしている。ドミタナスの兄弟が来たと伝えてくれ」
『ほっほう! とても兄弟には見えないヨッ』
「もう、面倒だな。マーサ婆さん! 着いたよ! フルヴラとジャロックだ!」
痺れを切らしたフルヴラは大声でマーサを呼んだ。抗議の声をあげようとしたノッカーは、ドアが突然開いた為に壁に押し付けられて『ムギュ』と変な声を出した。
ドアを開いたのはやや小柄ながら存在感のある老婆である。家の中からの光で真っ黒な影に見えるが、その中に浮かぶ鋭い眼光は、フルヴラの知っているマーサのものであった。
「おやまあ、本当にフルヴラなのかい?」
一瞬の内に彼らを観察したマーサは、彼と弟とを認めると、両腕を広げて歓迎した。
「つまり新しい魔王にしてやられた訳だね?」
「してやられた訳じゃない。現にこうして生きているし」
「馬鹿者ッ! 『小凍りの水晶』が無ければ、その場で消えていたやも知れぬぞッ!」
マーサ婆さんに口答えなどするものではなかった。散々絞られた後、フルヴラはようやく、マーサが使い魔を送って来た理由を問うた。
「忘れてたッ! ひっさしぶりに
「婆さん、引退したんじゃなかったか?」
「うるさい。聞くのか、聞かぬのか?」
「聞くよ!」
フルヴラとジャロックがうなずくと、ドミタナス家の巫女は目を
「このドミタナス家の血筋から、勇者が生まれる!」
老兄弟は仲良くひっくり返った。
つづく
◆マーサの家のノッカー
マーサの魔法により、不審者が
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