第17話 跡取りが出来た
少年フルヴラは骨付き肉の骨をカランと皿に転がした。
「ふーっ、食った食った。久々にたっくさん食ったなぁ」
「全く羨ましいよ、兄貴。あたしは今じゃそんなに食べれないよ」
「何が良いもんか。身体のコントロールが効かんのだぞ。魔力に至っては微々たる物だ」
「それにしても、まあよく無事だったなぁ。記憶まで巻き戻ってたらどうなってたかな」
フルヴラの表面的な時を巻き戻すにとどまったのは、『小凍りの水晶』が代わりに魔力を放出したからだと彼は考えた。
「ただの小僧に戻るよりはマシか。おい、わしの服は用意出来たか?」
「兄貴、わしってのはおかしいって」
ジャロックはそう言いながら丸めた服を渡した。グランシエラよりは小さな街だが、店も多いし品揃えも悪くない。ジャロックは店を回って、大人ものの服を仕立て直してもらったのだ。
「悪くない」
「そうかなぁ。子どもっぽくないよ」
「わしは子どもではない!」
「わかったわかった。で、これからどうすんだい?」
「元に戻りたい」
フルヴラは心細げに呟いた。
「とは言うものの、魔王というやつが何がなんだかさっぱりわからぬやつであった」
「へえ、そうなのかい?」
「いいか、ジャロック。魔王という者はな、『目的』があるものだ。ところがわしが会った魔王はこの世界の支配も滅亡も望んでいないらしいのだ」
「でも、何かしたいからグランシエラが魔都になっちまったんだろう?」
そう、あの女は何か言っていた。
『欲しい物があるの——』
「欲しい物——?」
何かが引っかかって、彼は腕組みして考え込む。
その様子をジャロックはにこにこして眺めていた。
「なんだ? ニヤニヤして」
「いやぁ、これで店に良い跡取りが出来たなぁって思ってたのさ」
「なんでわしが跡取りなんだ!」
つづく
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