第5話 ウイスキー・フラワー

 美しい町娘・アナベルのお願いをききたい司祭様。アナベルのお願いをかなえる道具、あるかしら?



 ◆◆◆◆◆◆◆


 はい、いらっしゃいまし。おや、これは司祭様。え?たいそう繁盛しているようだと?


 ええ、ええ、おかげさまで。なんだか最近急に品物が売れるようになりましてね。ははは、嬉しい限りで。


 しかし魔導士教会の司祭様の目に止まるような、そんな代物はございませんて。


 え?

 最近、魔導士教会に入会したい方が居る? それはおめでとうございます。会員は多い方がよろしいでしょうな。


 なに。その方が悩んでいる?


 ほう、魔力が少なくて魔法が使えない? ううん、なんだってそんな方を入会させたんです。魔法使いになる素養が無いじゃありませんか。


 うんうん、その女性が白昼堂々、連れ去られそうになった⁈ 彼女自身が魔力があれば自分で身を守れる?


 ううむ、なるほど。


 そうすると、司祭様はその方の魔力を上げるエーテル系の魔法薬が欲しいと?


 MPを補充するものでは無く、使用者の魔力そのものの上限を上げるんですな。


 あー、その辺に確か『ウイスキー・フラワー』があったはずですが……。


 えっ?『ウイスキー・フラワー』は伝説の品だって? ああ、そうか、兄貴は冗談言ってたのかな……。


 まあ、強い魔力が封じ込められているのは間違いないですよ。ええ、お手にとってどうぞ。


 え? コレは『ウイスキー・フラワー』に似た品だって? 効果も似ているだろうって?


 へえ、1200ギルで。

 安い? いやいや、本物じゃないならそれくらいのもんで。


 はい、またのお越しを!






 おや、司祭様。いらっしゃいまし。


 ……いかがなされました?


 いえ、御老体が鼻水垂らして泣いていらっしゃると、さすがに引きますな。


 なに?

 あの『ウイスキー・フラワー』が本物であったと?

 まさかそんなはずは……。


 本物を知っているかって?

 いえ、兄貴の受け売りでさらっとしか。へえ、すみません。


 本物は、使用者の体内に魔力炉を生み出す⁈ その魔力炉から無限に魔力を得ることが出来るですって⁈


 ご冗談を……。いやですよ、こんなしがない雑貨屋をからかっちゃあいけません。


 なに?

 どちらにせよ、その方は司祭様より強い魔法使いになってしまった?

 司祭様より強くなったから、入会する必要がなくなったって? 魔導士教会を辞めちゃった?


 はあ、なんと申しますか……。


 なになに? 素敵なお嬢さんで、人生初の一目惚れだったのに?


 ……司祭様、御自分の年齢を考えた方がよろしいかと……。



つづく


次回『征服の天球儀』





◆『ウイスキー・フラワー』


 伝説のアイテム。使用者の体内に魔力炉を作り出し、無限に近い魔力を供給する。

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