第3話 忠誠の雫
素敵な町娘・アナベルの気を引きたいローズ商会の旦那さま。
彼女が気にいる良い品あるかしら?
◆◆◆◆◆◆◆
はい、
いらっしゃいまし。やや、これはこれは、ローズ商会の旦那じゃありませんか。
なんだってこんな店に?
へえ、少し変わった贈り物をしたいと?
まあ、旦那の店にない物ならありますがね。お相手は……?
ほう、若い娘さん?旦那も隅に置けませんね。
最近人気の……?
いやぁ、この歳になるとそういうのには
なになに?
その娘さんが言うには、最近、
人を信じられるようなアイテム、ですか?
そうは言っても、人間、信用ならないお人もおりますからねぇ。いえ、旦那のことじゃありませんよ。
うん、アレがいいかな。
いえね、確かこの辺にペンダントが……。ごちゃごちゃしていけないですね。そっちにありませんかね?
緑色の涙型の石が付いていまして。
あ、ああ、それですそれです。
綺麗でしょう?
え? お相手は濃い目の金髪?
それなら緑の石が似合いますよ。
へえ、お買い上げで。
いや、ありがとうございます。1700ギルで。え? 安いって? いやぁ、兄貴が仕入れてきた物でしてね。それくらいじゃないかなぁ。
ペンダントの名前?
『忠誠の雫』でございます。いえ、贈った方が忠誠を誓うような物ではありませんよ。あくまで身に付けた御本人が
なに、安心した?
へえ、
どうも、またのお越しをお待ちしております。
へえ、いらっしゃいまし。
あれ、旦那?
どうしたんでございますか? あれ、いやですよ、そんなに怒っちゃ……。
なに?
『忠誠の雫』を贈ったら、その娘が「あなたは私を裏切るわね」と言い捨てて逃げちゃった?
いえ、あの品はね、身に付けていると、自分を裏切る相手がわかるんですよ。なんでも紅く色が変わって、裏切る未来が垣間見えるとか。
そりゃ、私のせいじゃございませんね。
つづく
次回『真夜中の小瓶』
◆『忠誠の雫』
持ち主の魔力に応じて、対面する者が自身を裏切るか否かを示すペンダント。
裏切る場合は紅く色が変わり、その未来を見せてくれる。逆に生涯裏切らない場合は緑のままで、対象者が自分に忠誠を誓う条件がある場合はその条件を見せてくれる。
いずれにせよ他人を利用する為の道具であろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます