第2話 魅惑の宝珠


 へえ、いらっしゃいまし。

 おや、若旦那。

 何をお探しで?


 ほう、意中の女性に贈り物をしたいと。はあ、町娘の美しい方で? 御自分の魅力に気が付いていないと?


 ははあ、そのお嬢さんは自分に対して自信がないんでございましょうねぇ。


 さて、何がよろしいでしょうかね? わしに言われても……。


 え? 魅力を上げる薬?


 確かその辺に、お望みの物があったはずですがね。そう、その辺です。


 なに? 薬瓶ばかりでどれがどれだかわからないと? さいですね……。


 ええと、確か紫色の小さな小瓶ですよ。いえ、中身が紫なんです。いや、瓶といっても変わった丸い珠みたいなもんでしたな。


 ええ、お薬ですよ。一回きりの消費アイテムで。紫色の薬の中にペリドットと歯車……それから金属の結晶体が入っていまして……え? そんな物が薬なのかって?


 いやですよ、若旦那。

 魔法薬ってのは魔法そのものを閉じ込めるんです。ですからね、飲む寸前まで魔法そのものが結晶化されてたり、見た目だけ歯車の形になってたりするんです。


 え? 勉強になった。それは良かった。


 は、これじゃないかって?


 どれ。

 おお、これですな。これは間違いなく『魅惑の宝珠』でございます。飲めばたちまちステータス魅力がアップする事間違いなし!


 お代?

 ……いや、わしの兄が仕入れてきたんでね。ええと、これぐらいのサイズの薬なら1500ギルってくらいかね。いや、ときますよ。1300ギル。


 へい、毎度。

 頑張ってらっしゃいまし。




 え? なんです?

 今のやりとり見てたって?

 いやですね、お客様。

 なんでまけたのかって?

 いえね、若旦那には内緒ですよ。いつ仕入れた薬かわからないんで。へへ、魔法薬は大抵消費期限はないもんですけどね。





 はい、いらっしゃいまし。

 あれ、若旦那。

 ガックリ落ち込んで、どうしました?

 え?

 例の彼女に『魅惑の宝珠』を飲ませたら?

 ステータス魅力がMAXに?

 いや、そんなバカな。

 しかも、その魅力に大勢の男達が押し寄せて?若旦那は圏外に?


 ありゃ……本物だったかね。




 つづく


 次回『忠誠のしずく



 ◆『魅惑の宝珠』

 消費アイテム。使用した者のステータス・魅力を最大値にする。効果は死ぬまで。

 精神攻撃耐性がない者にはチャームの効果が影響し続けるため、事実上「カリスマ」が付与される。

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