第二章

気がつけば夏。


自分の人生が、少しだけこれまで違う方向を向きはじめた気がする。もちろんまだその方向へ進めている訳ではないけれど。


スロットのこと。

まだ止められず続けてきている。

でも、この5月から、自分でもわからないけれど毎月プラスになった。

正直、4月までは貯金も全くできておらず、7月にある車の車検も半ば諦めかけていた。

けど、スロットのおかげ?というようなことは言いたくないけれど、プラスになったお金で車検も通すことができた。全部で22万円くらいかかったけれど。


思えば、前の車は、逮捕されて出て来てそのまま生活保護になり処分した。

今回、車検を通せたことは、一応自分の目標を達成できたとは思うけど・・・・・・。

ただ自分でちゃんと貯金をした訳ではないから複雑。

結局、スロットでこれまで通り負けていたら、今頃は車検も通せずだったと思う。


仕事のこと。

仕事は続けている。4月からは契約も切り替わった(とはいえ、身分は契約社員のままだけれど)。収入も若干ではあるが増えた。仕事量も多くなったけど。時給が100円上がったのも大きい。はじめは100円なんてって思っていたけど、月で考えたら意外と大きい。

でも相変わらず、自分の仕事にやりがいやそんなものは感じることは少ない。

深夜のコールセンターのSV。人が足りないときは自分も電話を取って、お客さんの対応をする。もちろん、様々なお客さんがいて、正直ぶちギレそうになることもある。

「どんな仕事をしている?」と聞かれることがあっても、いつも適当にごまかしてる。

36歳になってコールセンターで契約社員、恥ずかしいという気持ちがある。


彼女のこと

第二章とタイトルにしたけれど、彼女とのことが少しだけ変わりはじめてる。

簡単にいうと、二人で一緒に暮らすためにお金を貯めはじめた。

言い出したのは僕の方。でも、正直そんな深く考えて言った訳ではなかったと思う。

でも、びっくりしたのが、それに彼女が真剣に答えてくれたこと。どれくらいお金を貯めれば良いとか、どんな部屋に住むとか、実際に不動産屋さんに行き、練習がてら内見もしてきた。

そんな彼女を見ていると、自分も真剣にやっていかないといけないと、改めて思うようになった。


具体的に話してはないけれど、おそらく彼女は一定の貯金はあると思う。

それに比べ、僕は車検をしてほとんど貯金はない。

とりあえず、お互い50万円ずつ貯めようって目標を立てた。

普通に生きてきていたら、50万なんて貯まってるんだろうなって、意味のない後悔をしたりもするけれど。車を買うために半年くらいで確かに貯められたけれど、あの時とは状況も違うし、もう少し時間はかかると思う。


何より、自分では貯められる自信ないから、お金は彼女に渡すようにしている。

これまでも、お世話になっている女性にお金を預かってもらったりしていたけれど、結局スロットで負けてお金がなくなる度に、預けたお金を返してもらっていた。

さすがに彼女にそれはできないし、今はそんなことをしようとは思わない。


スロットに依存して、本当にこれまではスロットが第一だった。

時に冷静になっても、結局スロットに負けたら、もうどうしようもなくなってしまっていた。

それで、母親からお金をせびり、怪我をさせ逮捕もされた。


そんな自分から、彼女と一緒に暮らすために、ほんの少しだけ自分が変わりはじめている気がする。そして、人生が少しだけ違う方向を向きはじめた気がする。


でも、進みはじめた訳ではないと自分でもわかってる。それにいつスロット第一の自分にまた戻るのか、怖さもある。それがスロット依存だし、これまでの人生がそうだったから。


なにか、日々生きているとあまり感じないけど、改めて振り返る。

逮捕されて、お金も仕事も住むとこもなくなって、生活保護になって、入党して。今は一応仕事をして、車も維持して、彼女と将来について話せるとこまできた。

自分でいうのもおかしいけれど、スロットは止められてないけど、少しずつだけど進めているのかなとは思う。


そのかわりといっては変だけれど、党の活動はほとんどしていないし、お世話になった女性ともほとんど疎遠みたいになってしまっている。今でも給料のうち10万円は女性に送金されているから、支払い分を除いて残ったお金をポストへ投函してもらう、本当にそれだけの繋がりみたいになっている。

もちろん、女性の存在がなければ、まだこんな自分だけれど、こうやって生活できていることもなかったと思う。

でも正直、党への気持ちは皆無といっていいほどになっている。


第二章なんて書いたけれど、本当、自分の人生がこれからどうなっていくのか、全くわからない。

ただ、彼女と一緒に暮らす、その目標は必ず達成したい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る