孤独死した人の部屋を片付ける 2

 孤独死した人のことを、僕は直接会った訳ではないが話には聞いていて知っていた。

 パチンコに金を全部つぎ込み、実の弟の年金まで奪ってパチンコに行く。そして毎月無一文になり、会に金を貸してくれとせがんでくる。僕は女性に、そんなパチンコ依存は何回助けても同じだから無視した方が良い、と助言したこともあった。おそらくそのとき僕はスロットをやめているときで、今よりまともだったのだと思う。

 部屋に入ったとたん、尿の匂いのようなものが鼻をつく。不動産屋は第一声、「これ死体の匂いとは違うよな?」って。そもそも死体の匂いなんてわからんから答えようがないって。でも、不動産屋としては、次の入居者を考えたとき、部屋で死なれて誰にも発見されない孤独死が一番困るとのこと。今回は死後一週間ほど経っていたとのこと。これが夏だったらと思うと……。

 部屋は狭いワンルーム。生ゴミとかがあるわけではなく、いわゆるゴミ屋敷とは違う。ただ、とにかく汚い。掃除なんて一切していなかったんだろうなと思う。最初に目に入ったのは、ぐちゃぐちゃにひいてある布団。むしろそれだけで部屋の半分近くが埋まっているくらい、狭い部屋。不動産屋からは、まずその布団を段ボールに入れるように指示される。従うしかない。本当に触りたくもないくらい汚ならしい。って、汚いどうこうもだけど、はっと気がついた。

 この上で死んでたんやろう。って。

 ユニットバスの風呂の中にはなぜか衣装ケースがあるし。もちろん、その中の服も一つずつ出して捨てる。

 結局なんやかんやで、大きいゴミ袋15袋ぶんくらいのゴミが出た。これで生ゴミなんかもあったらってぞっとする。でも、これを片付ける仕事をしている人もいるんだよなぁって。まだ部屋にはゴミ袋を置いたままにしているので、それを捨てる仕事もまだある。本当、金さえあれば、絶対にこんな仕事はしたくない、それが正直な気持ち。


 なんというか、不動産屋としては、この部屋の片付けを僕にさせたのは、お前もこのままだとこんなふうになるよ、というメッセージもあったらしい。でも本当病気だなと思うのが、こういうのを目の当たりにしても、その日もらったバイト代でスロット打ちに行ってやろうか、と思ったこと。ちなみにバイト代は4500円。何もなければ10分ももたず無くなる金額。しんどい嫌な思いをして、10分も経たぬうちになくなる。ただ、それが2万、3万になることもある。この良い方の思いしか頭には浮かばなくなり、勝負に行こうとなる。

 さすがにこの日はスロットには行かなかった。ちなみに今日まで行っていない。でも、この瞬間だって、給料入ったら打ちに行こうって思ってる。今度は勝てるって思ってる。

 いつだったか、まだ大学院生の頃だったか、スロット依存の僕に親が、「そのままならホームレスなるよ」って言われたことがあった。そのときは自分がホームレスになるわけない!って思ってた。実際、実家にいられなくなり、しまいには逮捕され、ネカフェやカプセルホテル、車中泊として過ごした。

 このままいったら、今回掃除したような部屋で孤独死する。ホームレスになるといわれた時のように、否定をする気持ちが起きない。ただ、だからと言って、スロットをやめられる、ともならない。

 でも、あと何年生きられるのかわからないけれど、このままスロットに依存しただけの人生は絶対嫌だ、その思いはある。

 

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