孤独死した人の部屋を片付ける 1
来月の15日まで80円という状況だった。これまでは女性にお金を借りたりしたが、今月は借りた分までスロットに使ってしまった。彼女にはいえない。そうなった時僕は、不動産屋さんに頼みアルバイトをさせてもらう。この不動産屋さんについては以前書いたか記憶が定かでないが。
僕がまだ母親と暮らしていた頃、多分、10年くらい前かな。この不動産屋さんと出会ったのは。家賃滞納し僕たち親子は住む場所がなくなる危機にあった。保証人もおらず、何より初期費用のお金もない。当然そんな状況でも、僕はスロットに依存し全く役に立てていなかった。むしろ迷惑をかけていた。そんな時に、役所に相談に行って紹介されたのがこの不動産屋さん。
僕たち親子は、この不動産屋の事務所が1階に入っているボロビル(申し訳ないが)に入ることができ生活できるようになった。まぁ恩人といえば恩人。結局、そこで僕は母親と言い争いをし、何回かパトカーもきたりしたし、最終的にそこで母親を怪我させて逮捕された。そういうこともあり、この不動産屋さんは、僕が他の人に隠している部分を全部知っているともいえる。もちろん、スロット依存のことも。
僕が拘置所から出て、スロットで金を使い果たして、生活保護の申請をしたとき、たまたま役所でもこの不動産屋さんに会った。腐れ縁というやつか。そのおかげで、今のまぁまぁ快適に暮らせる家に入ることもできている。まぁ、申請に行った日にたまたま出会ってなかったとしても、おそらく僕はこの人のことを頼っていたと思う。だって他に頼れる人なんてそのときいないし、何より僕の素性を知っているし。逮捕されたことも、母親から聞いていたらしく知っていたし。
この人は、僕がお世話になっている女性とも繋がりがある。まぁ、会に相談に来るような人の多くはその辺の不動産屋で家を借りられない人がほとんど。僕みたいに。そういう人の家探しをこの不動産屋さんに頼むというわけ。この世界は広いようで狭いなって実感する。
話が長くなってしまった。こんな僕のことを、なぜかこれまで助けてくれているし、まだ僅かばかり期待もしてくれている?僕が大学院修了ということで、スロットさえやめれたらな、と。まぁ、もう10年くらいその期待は裏切り続けてるけど。
あと、この人も、スロット依存。本人いわく若い頃はプロで、不動産屋の開業資金もスロットで貯めたとのこと。真意は不明だが、とにかく毎日スロットに行っている。だから、僕に対しても、スロットへ行くなと説教するのではなく、勝つ立ち回りをしろ、と説教してくる。あぁ、これももう10年くらい言われ続けてるけど。
でも本当、僕がお金なくなって頼んだら、アルバイトをさせてくれて、助けられている。甘えちゃいけないんだけど。事務所の片付けや、入居者が逃げたり、死んだりした部屋の片付けだったりと、お金があれば決してやりたいアルバイトではないけれど。まぁ、生活保護の人を入居させるということは、それなりのリスクがあるんだって実感する。
で、今日、アルバイトにありつけて事務所に行ったら、孤独死した入居者の部屋を片付ける、と告げられたのだった。逃げた人間の部屋の片付けはしたことあったけど、死んだ部屋は初めてだった。
つづく
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