逮捕された話#8

差し入れしてくれたTシャツを着て面会したら、弁護士ちょっと嬉しそうだったけ。

それはどうでも良いんだけど。


拘置所で面会した時に話すのは、やはり裁判に向けての話がメイン。

僕の取り調べの記録やらの調書などをもとに、事実関係の確認など。

まぁ、怪我させたのは事実だからどうしようもないし、母親は診断書を提出してたから、こちらとしては争いようもないし、下手に争ったら拘留が長引くだけってことも言われた。保釈(お金を払って一時的に外に出られる)ができるんなら争ってもいいけどね。保釈って数百万のお金を預けんといけん。そんな金ないし、保釈金を借りられるとこもあるんだけど、結局保証人がいないしで、僕には無理だった。


で、弁護士がいうには、おそらく裁判では罰金刑だろうって。これってレアケースらしい。だって、罰金刑なら略式起訴で終わって普通拘置所までいかないもん。

なんで弁護士がこういうんかというと、結局、裁判の前段階で、裁判官、弁護士、検事である程度話がついてるみたい。

もう1つレアケースだったのが、罰金刑になるけど、僕はお金を払わなくて良いだろう、ってこと。

なぜかというと、拘置所に拘留されている間、1日あたり約5000円かな?で換算するという、システムがあるらしい。それが適用されるだろうって。

つまり、拘留されているあいだに、僕は罰金を払ってることになってる。すみません。うまく説明できんで。


で、結果からいうと、本当にいうとおりになった。

僕の判決は罰金30万円。でも、拘置所に拘留された日数を換算にいれると。だから、僕自身は1円も払っていない。


もうね、なんでこんな弁護士もこれまでないケース、っていうようなことに当てはまらんといけんのんかわからん。でも、犯罪者だから仕方ない。


あと、裁判のこと。これは多分緊張してたんか意外と記憶がない。僕は2回裁判を受けたんだけど、1回目は傍聴席に、1度だけ会いにきたギャンブル依存の専門家?のおばちゃんが座ってた。それだけ。

正直彼女や会社の人が来たらどうしよう思ってたけど、僕が弁護士を通じて来ないでくれって頼んでたからか、それはなかった。

ただ、2回目の時は終わる間近くらいに人が入ってきて、僕は誰か見たくなかったからはっきりは見てないんだけど、きっと会社の人だったんじゃないかなって思ってる。でも、今となってはわからんけど。


あと、やっぱり裁判は改めて自分の情けなさを感じた。検察が調書を読み上げるんですよ。僕がいかにクズな人間であるかを。まぁ、事実なんだから仕方ないけれど。

で、今思いだそうとしてんだけど、裁判で弁護士が何を話したかとか、正直覚えてない。でも、会社での評価とか、こうなってもまだ会社に戻れる場所もあり、社会復帰できる、みたいなことは言ってくれたと思う。

まぁ、一ついえるのは、ドラマや映画みたいな、あんな激しい攻防みたいなんは一切なかったってこと。

なんか、淡々と進んでいった。前にも書いたけど、もう、裁判官、弁護士、検事の間である程度話がついてるからだと思うけれど。

で、判決のときに裁判官から言われたことで覚えているのが、


あなたには交際相手もいますよね。その人のためにも、これからは心を改めて真面目に生きてください


みたいな。ここはなんかドラマみたいだったけれど。

で、判決が出て、車で拘置所へ帰るんだけど、その車内でも刑務官が僕に対する判決に驚いてた。


そこからは、ものすごく早い。そもそも僕は判決が出た時点でもう拘留をされる身でもないから、確か手錠もされてなかったと思う。

で、独房に戻り、予めまとめていた荷物を持ち、拘置所に入った日に荷物検査されたとこで、預けていた荷物を返してもらう手続き。このあたりで、本当に出られるんだって実感したと思う。


ほんとどうでもいいことなんだけど、僕は財布に好きな女子プロレスラーのプロレスカードを4枚入れてたんだけど、検査の度にそれが恥ずかしかった。

なんなねんこれ、みたいな空気になるし。そりゃ普通入れてないわな。

まぁ、当然なんだけど、預けていたものは、紙切れ一枚なくなることなく僕に返ってきた。


そして僕は拘置所を出て、とりあえずセブンイレブンでコーラを飲んで、弁護士がいる弁護士事務所へ向かったのでした。

そこで、彼女と会う約束をしていたから……。


                 つづく

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