逮捕された話#6

今だからなんか面白おかしく?書けてる部分もあるけど、そりゃ逮捕されて留置場、拘置所にいる間はしんどかった。

特に大部屋にいるときは。めんどくさい犯罪者の相手せんといけんし。ご機嫌も伺いながら。

でもやっぱり、皆ストレスやら不安やらがあるんだと思う。悪いことしてんだから、僕も含め自業自得だけど。

まだ僕は、とりあえず裁判終われば釈放されるだろうってことで、終わりが見えてたから頑張れたけど、中にはもうほぼほぼ刑務所まで行くことが決まってる人間もたくさん居たしね。そうなるともう、ここで権力やら地位を築いて少しでも良い時間を過ごすしかないってなるんだろうね。


でも、僕が頑張れたのは、当時の彼女のおかげ、それしかない。


留置場にいる時も、何度も面会に来てくれたのだけれど、僕は会わなかった。


こんなとこに彼女を入れる訳にはいかない


って思いがあったけれど、それいじょうに逃げてたんだと思う。彼女と会うのがただ怖いだけだった。

でも、弁護士さんを通じて、本当に僕のことを心配してるって聞いて、会わないとって……。遅いよね。


結局逮捕されて3週間くらい経ってからかな。彼女と会ったのは。

拘置所の面会室、それこそドラマのやつそのもの。ガラスで小さな穴が空いてるアレ。

で、刑務官が横でひたすら書記。


拘置所で初めてあったとき、彼女は泣いてた。

情けないとかそういうのでなく、本当に僕のことを心配してくれていて、ようやく会えたことに対しての涙だった。

僕も泣いたと思う。そんな彼女の気持ちもよそに自分を守ろうと逃げていたことが情けなくて。


それから彼女は、週2回会社へ行く前に面会へ来てくれた。余談だけれど、僕は最近女性のお手伝いで、面会する側として拘置所へ行った。その時、本当に改めて彼女がどんな思いでこの面会室へ来てくれてたんだろうって、なんともいえない感情を抱いた。遅いよね。

ちなみに彼女とは同じ会社だったから、仕事のこととか、他愛のないこととかを限られた20分だったかな、話してた。笑ったりもしてくれてたけれど、当たり前だけれど、それは自分のために無理をしてくれてたんだろうなって思う。

時間が来たら、いつもガラス越しに手と手を重ねてた。刑務官の人によっては、少しだけ時間を長くとってくれる人もいた。

また、余談だけれど、彼女のおかげで僕は大部屋から独居にうつれた。喧嘩し、自分でも気づかないくらいの顔の腫れに彼女が気づいてくれたことで、書記をしていた刑務官が、どういうことや?ってなって。

自分からはいえないからね。部屋全体の連帯責任になり懲罰になる、なにより変な意地みたいなんが自分にもあったし。


会いに来てくれただけでなく、手紙のやり取りも週3、4回はしてた。もちろん、中身は全部検閲される。でも、そんなこと関係ないよね。本当に嬉しかったし、会いに来てくれるのと、この手紙が唯一の支えだった。

手紙には、拘置所出たら仕事に戻るとか、そういうことを僕は書いてた。ありがたいことに、会社は戻ってきても良いっていってくれていた。僕もそのつもりだった。

でも、結局僕は、また逃げてしまったけれど……。

それはまた違うとこで書こう。


彼女とやり取りした手紙はもちろん全部今も持ってる。でも、きっともう読むことはないんじゃないかなって……。感情をうまく表現できないけれど。ただ、ずっとこれからも大切にしていく。


なにより、僕なんかより彼女の方が辛いし、それに情けないし、恥ずかしかったと思う。

彼氏が母親怪我させて逮捕されるなんてね……。


こういうことを書いてもね、やっぱり今も僕は、自分を守ろうってしてる。

きっと、人のことを心から好きになったりできない人間なんだろうなって……思う。

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