5 代理人

「大帝国鉄学議会を開始します。皆様ご着席をお願い致します。本日は沙弥煌羅総理は、私用のため休暇を取られました。ですので、不承不承ながら私、日比奈汐が代理を務めさせていただきます。さぁ、皆さん拍手。ウェーイ。あれ?皆さん拍手は?ウェーイ」


 汐の言動と無表情な態度が噛み合っていない、みんな反応に困る。


「……ぅぇーぃ?」


「日比奈汐副総理、そんな棒読みで言われてもな…」


「だって私、いつもテンション低いって言われてるし。こんな感じだと、それっぽく見えるかなと」


「見えないよ、全然見えない。頭良い人がバカっぽく演じてるけど、下手すぎて反応に困るやつ」


「…ゴホン。それはともかく本日の議題はこちらです」


「流した…」


 汐は髪を弄りながら、咳払いをすると仕切り直した。


「安原勝治を管理下に置いたことで、男側のデモの規模が大きくてなっています。ですので、女側に襲撃などの所謂、テロを起こす可能性があると考えた方が良いでしょう。議題に沿ったご意見がある方は挙手の上、発言をお願いします」


「はい、総理代理」


許刺真泉ゆるしません家畜大臣」


「デモ隊のリーダー格を捕らえて、見せしめに処刑しては?」


「許刺真泉さんは、相変わらずエグいこと考えるなー。そこが好きだけど」


 ヤジを気にせず、許刺真泉は涼しい顔でお茶を啜る。


「現状では、その考えは認可できません。もし、男側のデモ隊リーダーを安易に処刑すれば必ず暴動が起こります。暴動が起きれば、私達では対処出来ないです。出来れば穏便で、差し障りのない意見をお願いします」


「はい、総理代理」


未来みらい防衛大臣」


「でしたら、デモ隊リーダーさんと話し合いで解決出来ないでしょうか?」


「それが出来るならもう実現してますよ。デモ隊の面々は癇性な人達ばかりで話が通じません」


「そうですか…」


 未来は残念そうに俯いた。


「他に意見がある方は?」


「はい、総理代理」


「秩序ナノ国家公安委員会委員長」


「護身のために私達のボディーガードや私達自身に拳銃だけではなく、殺傷能力のある武器の所持を認める法律を作るのが最善では?武器を持つ人間には、容易に襲撃は出来ないかと思います。それと私達一人に対するボディーガードの人数を増やすべきだと考えます」


「しかし、男側も対抗して武器を持つのでは?」


「それは問題ないです。知り合いに腕利きのボディーガードの方がいらっしゃいます。彼等は日本でも有数の部隊です」


「なるほど、面白い案です。まあ、抑止力にはなりますね。腕利きのスナイパーの方も用意出来ますか?」


「大丈夫だと思いますよ?」


「ならお願いします。こちらの議題は終了させていただきます。本日の大帝国鉄学議会をこれにて閉幕します。皆様お疲れさまでした」


「お疲れ様でした」


 議会終了後に汐は一人、ボーリング場でストレス発散をしていた。


「総理代理は疲れます。もうしたくないです。あ、帰りにサンドイッチ買って帰ろうかな」


 汐は一人が好きだ、あまり人と関わるのが好きではない。そんな汐は、男は殺したいほど嫌いだ。容赦なく殺してしまいたい。しかし、無表情で感情を表に出さない、今はまだ。

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