第4話 泰介、春香を家に招く/蛍光灯のスイッチ
「よう、篠崎」
昇降口で泰介は春香に声をかけた。
春香の顔に動揺が走ったのを泰介は見逃さなかった。だがそれ以上に右足を引いた姿勢が気になった。
警戒から笑顔に変え姿勢も戻し、春香は答えた。
「先生びっくりするじゃない」
「ファミコン、今から見に来るか?」
「あんなに嫌がったのに...どんな心境の変化があったのかなあ」
「懲戒免職も悪くないと思ったんだ」
「…いいですね、それ」クスクスと笑う春香。
部屋に春香を通し、窓から射す夕陽に感動する春香。
泰介はそれを最初眩しそうに見ていたが、我に帰り険しい目をした。
「お茶入れるから部屋の電気付けてくれ」
春香は初め壁のスイッチを見回したが、部屋の中央に傘の付いた蛍光灯にスイッチ代わりの紐がぶら下がってるのを見つけた。
カチ。カチ。
「あれ?付かない」
そういった春香の手を包む様に握る泰介。
「先生、こういう事しちゃうんだ?」と言いながら泰介に抱きつく春香。
背中に回された両手、密着する身体から感じる体温にまた一時惑う。負けずに泰介は話し始めた。
「1月の終わり頃、部屋をメチャクチャに荒らされた事があった。
警察を呼んで捜査して貰ったんだけど取られた物が無かったせいか特に進展無し。
そして驚く事に先週も誰かが部屋に侵入した形跡があった。
だけど今回は警察を呼ばなかった。何でだと思う?」
「私が犯人だと思ったから?」背中に手を回し、甘える様に二人の身体をゆらゆらと揺らしながら春香は続ける。
「私がそんな事する理由ないじゃない、証拠も無いんでしよ?」
「理由か、確かに検討も付かない。あるとすれば…自意識過剰って思われるかも知れないが、俺に家に来るのを拒んだからその腹いせに…それしか思い付かない」
「先生の事好きなのバレちゃった」クスクスと笑う春香。
「証拠ならちゃんとあるよ。先週、お前は学校を休んだ。あと監視カメラな、カメラ部分と録画部分が壊れてたけどな、最近はスマホにも全部録画内容送信されるんだ」
春香のゆらゆらが止まった。
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