月暦11 父からのプレゼント
「水芽、ちょっと降りてきてくれるか?」
部屋にいた世凪は父に呼ばれ、リビングへ。
リビングテーブルの上には水色のリボンで放送された大きな白い箱が置いてあった。
「なにこれ?」
「春休み中にいつもの仕立て屋で採寸するよう言っただろ?」
「Almanacで採寸した時の?」
「そうだよ。仕立て上がったんだ。」
Almanacはパーティードレスの高級ブランド店だ。毎年父親が帰らない代わりに贈ってくれる。世凪はどんなものができているかは知らないが、毎年黒、水色、紫、ピンクなんかがおおかった。ピンクは幼く見えるからやめてほしいと父に伝えていた。ので、今年は…
「わあ!紫だ!」
シックな紫色にガーリーなレース。膝まであるゆったりとした袖はシースルーの生地が使われており、大人っぽさが表れている。ドレスの背中部分はレースアップになっており、可愛さが表れている。スカートはミモレ丈のため、足を出しすぎず、隠しすぎずで程よい。
今まで送られてきた服の中で一番好みだった。
「靴とアクセサリーに花飾り、バックまで…」
淡いピンクと紫の間をとったような色味で、ドレスと同じレースが施されており、かかとにはドレスと同じ色のシースルーのリボンが付いているヒール5センチの靴。
シンプルなダイヤのイヤリング。白の花飾り。
「お父さん、ありがとう!!
すっごく好みだよ…!!」
「本店の店長、三武さん分かるか?彼女がお嬢さんならこれがお似合いじゃないですか?って言ってくれてね。」
「さすが三武さん…ほんとに嬉しい!!」
「約束の明日に間に合ってよかった。」
「明日、これを着て出かけるの?」
「そうだ。11:00には準備を終えておいてね。」
「うん!」
世凪は嬉しさのあまり部屋に戻ったあと、自分で実際に着てみた。
鏡の前に立って自分の姿を下から上へとみていく。
「三武さん、やっぱりすごい…
サイズぴったりだ…
髪色、元に戻せばよかったな…」
そうつぶやきながら、自分の目に入っている黒いコンタクトレンズを外した。
透き通った綺麗な柔らかいピンク色の目が露わとなった。
「裸眼の方が見やすいなぁ。」
世凪は壁に飾ってある幼い頃の自分の写真を見た。まだ小学校に上がる前の写真だ。
真っ青な空の下、バラに囲まれている庭。
そこに写っているのは幼い頃の世凪の姿と3人の少年、1人の少女だった。小さいときの世凪の姿は天使のような澄みきった水色の髪に毛先はパールアイリスの紫だ。ふわふわとしたカール。色白で透明感のあるマシュマロのような肌。丸く大きなうるうるとした瞳に光が反射している。その表情ときたら、これまで見せたこともないような満面の笑みだった。
世凪と赤髪の少女の間に黒髪の少年、その3人を挟むように赤髪の少年と茶髪の少年。
「茶髪の男の子…やっぱり思い出せない…」
世凪はコルクボードに飾ってある、一通の手紙を見た。
それは、3年前。
赤髪の少女から届いた手紙、
いいや、遺言だった。
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