第二章 温泉で黒魔術
017 モテ期到来、俺は賢者
新学期が始まり、1ヶ月程が経過した。
高校3年になって、俺の周りは一変したように思える。春、さくもと言う新しい女性との出会いがきっかけだった。
あれからも、さくもは相変わらずストゼロ三昧で、現在はアルバイトをしながら、アパートを借りる為のお金を貯めているらしい。充子の厳しい監視の下で、俺の家には定期的に泊まりに来ている。
その充子は、新たな黒魔術を生み出そうと日々努力をしている。俺の気を引く為だ。さくものことをかなり意識しているが、今のところ害を加えようとしたりもせず、寧ろ面白い関係になっているようにも思える。
慌ただしい日常にも慣れて来た矢先 ——
「有江くん、今度の連休暇でしょ? ボクと泊まりの旅行に行かない? あ、流石に二人きりは不味いからさ、充子ちゃんとさくもちゃんも誘おうね」
それは、亜房先生の提案だった。5月の連休、充子、さくも、そして亜房先生と言う謎のメンバーで旅行に行くことになった。
亜房先生の黒塗りの高級車で山道を走る。
「りんごくん、なんでこの女も誘ったのよ……許さない……絶対に許さない……」
「あたしは、りんごじゃなくて、旅先で飲むストゼロ目当てよ? 安心して」
後部座席で二人は言い争っている。俺は、極力外の景色を眺めて現実逃避する。しかし俺は、この年齢になってようやくモテ期が到来したらしい。
新入生で巨乳のさくも、幼馴染で貧乳の充子、大人の色気漂うボクっ娘亜房先生。
あらゆる属性を持つ女性達に囲まれているのだから。
「ところで、亜房先生……こんな山道、俺らは何処に向かっているんだ?」
彼此、2、3時間は車の中だ。現在地が全く分からない。
「エロ温泉だよ」
「何だよ、そのエロそうな温泉は……?」
「その名の通り、エロい温泉なんだよ。別名、『発情の湯』……。湯の効果で、発情してしまうんだよ。君たち高校生は、一番盛んな時期だからね。どんな風になるか、ボク、凄く楽しみなんだ」
保健室の先生が言うセリフではない。そろそろ俺の童貞が危うい気がする。
「湯気が見えて来たわ」
さくもが呟く。
確かに、木々の隙間から温泉の湯気らしき物が見える。エロ温泉だか何だか知らないが、本当に温泉は存在したようだ。
「さあ、もう少しだね……。飛ばすよ」
亜房先生は、山道なのに更にアクセルを踏み込む。曲がりくねった道など、彼女のハンドル捌きの前では直線道路同然だった。
数分後、山道を抜けて、ついに温泉街が見えて来た。俺らの他にちらほら観光客の姿も見える。マイナーな場所って訳ではないみたいだ。
「ようこそ! エロ温泉」と書かれた看板が俺らを迎えてくれた。
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