016 仲直り、俺はローソン派

 充子は、俺の部屋の窓にタピオカを付着させている。また六芒星を描こうとしているみたいだ。何故、タピオカが窓にくっ付くのか不思議に思っていたが、どうやらアロンアルファを用いているらしい。


「りんご、あの子……幼馴染の……」


「ああ、そうだ……」


 さくもにも何だかんだ迷惑かけるし、この際、充子とは真剣に話し合おう。


「おい充子! 何やってんだ?」


 充子の動きがピタリと止まる。


「りんごくん、お帰りなさい。待ってた……。仲良く二人で帰って来るのを……! ねぇ、私だけを見て欲しいんだけど無理かな!? ねぇ、りんごくん……寂しいなぁ」


「亜房先生と今日話したんだ……。きっぱり言われたよ。黒魔術なんて存在しないって……」


「え、え? なんでバレたの……!? とにかくタピオカブームに乗っかって、オリジナルの黒魔術を生み出そうとしていたの! 確かに、図星だわ……。勿論、全部私の作り話なの! ツイッターでバズってたって話も嘘……。でも、どうしてもりんごくんの気を引きたかった……!」


「充子、今から俺の家に来いよ。さくももいる。三人で友達になろうぜ。今夜は、本音で語り合おう……」


 メンヘラな充子。どこかぶっきら棒な彼女だが、本当に悪い奴じゃないことは俺が一番知っている。


「と、友達……? グスッ……わ、私は……りんごくんの友達になりたい訳じゃないのよ……うぇーん」


 充子が泣き崩れた。


「りんご、あなたってやっぱりバカね。不器用よ……」


 ほ?


 さくもが充子の元へと近づき、腰を下ろす。


「充子ちゃん……。心配しないで。あたしは、りんごのことは恋愛対象にならないわ」


「でも、この前一緒に寝てたのをカーテンの隙間から見てたのよ! 淫乱め……!」


「あれは、ストゼロのせいで気持ちが高ぶっていたの。ごめんなさい……。それにまだ、りんごは童貞よ。何より、冷静になって考えてみて……。えなりかずきみたいな声の男性と、一緒にエッチなことしようなんて普通考えないでしょ?」


「た、確かに……。私も、出来れば、りんごくんには一言も声を発さないでほしいもん」


「そうでしょ? 心配かけてごめんなさい。りんごは、あなたの物よ……」


 俺がディスられているのか、えなりかずきがディスられているのか、それとも両方ディスられているのか、俺にはちっとも分からない。


「うぇーん、ごめんなさい! 黒魔術なんてバカな真似してごめんなさい!」


 充子は、さくものおっぱいに顔を埋めて泣き始めた。こうして見れば、巨乳も悪くないように思えてきた。女の子同士が抱き合うのは絵になる。


「充子ちゃん、お酒は飲めるかしら?」


「え、う、うん……飲めます……」


「お酒とおつまみ買って来るから、りんごの家で待ってて。仲直りの意味も込めて、今日は3人で楽しみましょう」


 さくもは、抱き締めていた充子の肩をポンっと一度叩いて立ち上がった。そして、道路を挟んで俺のレオパレス21の向かい側にあるローソンに向かって歩いていく。


「充子、おいで。俺の家に……」


「うん、りんごくん……本当にごめんね……」


 充子は、袖で涙を拭く。


「もう謝るなって……。ほら、行くぞ」


 充子の背中に手を当て、家の中へと誘導する。窓に貼り付いたタピオカはそのままだ。だけど、今日一日ぐらいはそのままでいいだろう。


 ある意味、黒魔術とやらのお陰で、俺は充子に対する意識は本当に変わっているのかもしれない。だが、絶対に口には出せないことなのだが、俺は巨乳のさくものことも気になり始めている。


 貧乳と巨乳、贅沢な二股生活が幕を開いたのだった。



 ◆◇◆



 第1章

 タピオカの黒魔術


 完結

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