005 二人で潜るベッド、俺は興奮する
「美味しいじゃん」
オムライスを口にしたさくもが一言呟く。ゆっくり噛んで、実に満足気な表情を見せてくれる。
そしてさくもは、買ってきたストゼロを開け、一気に喉へ流し込む。偶然にも林檎味だ。
「ぷはぁー! たまんねぇな!
「ああ。その前に、俺の分のオムライス作ってくる」
再び台所に立つ。さっきの充子の件が、やはり頭から離れない。こんな時こそ、さっさと酒を飲んで忘れようと思った。
自分の分のオムレツは、さくもに作ったオムレツよりも雑に作る。フライパンの温度も、
ちょっと歪なオムレツを焼き、チキンライスに乗せ、さくもの向かい側へと座る。
「ほら、飲めよ。ストゼロ最高だぞぉ! 酒は誰かと飲めば、より
「ありがとう」
俺は、さくもに勧められるがままにストゼロを飲んだ。俺も林檎味。どんどん飲み干す。酒って、こんなに美味かったっけな。アルコール度数が高いせいか、すぐに体全体が熱くなっていくのを感じた。
何だか、いい気分だ。
ストゼロ、最高だ。
「はっはっは! かんぱぁい!」
俺は、突然サイドプランクを始めた。体が勝手に踊り出す。
「りんご、突然どうしたのよ! ひゃっほー! やっぱストゼロは最高だぜぇ!」
さくもも、酒で陽気になっていた。ストゼロは、一種の麻薬だ。これは、人を駄目にする。でも、駄目を求めて飲む物なのだ。
二人で、真夜中まで飲んで、叫んだ。
◆◇◆
時計は、深夜2時を過ぎていた。酔いに酔った俺たちは、いつの間にか床で眠ってしまっていたようだ。
さくもは、ベッドに背中をくっつけて、猫のように丸まって寝ている。
「寒い……」
季節的に、まだ夜は冷える。
「さくも、風邪引くぞ……。ベッド入れよ」
「う、うーん」
さくもは返事はしたものの、目を覚ます気配は無い。仕方なく、床に寝かせたまま毛布を掛けてあげた。生憎、他に布団なんてないから、俺はベッドの上で丸くなり、なんとか一晩堪えようと試みる。
「やっぱ寒……」
電気を消し、ベッドに横たわってみたがやはり寒い。
これは明日、朝起きたら間違いなく風邪を引いているだろう。正当な理由で学校を休めそうだ。
しかし ——
「りんごぉ……寒いでしょ……。一緒に毛布の中入ろう」
なんとさくもが、寝惚けたままベッドの上に上がって来た。りんごは覚束ない手付きで、俺に毛布を掛け、そして隣に潜り込んだ。予想外の展開に、体が下半身を中心に固まる。
「なんか……恋人みたいだぁ」
さくもが小さく、可愛い声で言い放った。俺は思わず息を止める。
さくもの後頭部が目の前にある。鼻息がかからないように、息を止めたのだ。しかし、息は止めたつもりでも良い匂いを感じ、気がおかしくなりそうになる。
「りんごってさぁ、彼女いたことあるの?」
「え、いや……いたことない……」
「そうなんだぁ。一緒だね。私も彼氏いたことないもん……」
さくもは、まだ酔っている。
「男女の友情ってあると思ってたけど、やっぱり難しいんだね……」
「え?」
意味が分からず俺は聞き返した。
「人肌が恋しいかも。
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