第11話市民の生活の変化

 家出したボクは転移装置で、遠い国に転移。

 ダラクという都市国家に到着。


 駆け出しだけど、憧れの冒険者のなることが出来た。

 冒険者としての初の任務は、商隊の護衛。


 危険な街道沿いの森を前に、盗賊団を皆で退治。

 隣街のユフクの街との、交易ルートの足がかりを作れた。


 ◇


 転移門設置から日が経つ。


 今はユクフの街から、ダラクの街にちょうど帰還したところだ。

 商隊やギルドメンバーも一緒で、帰り道は特に事件もなった。


「おお、すごい! 商品が、あんなに沢山並んでいる⁉」


 ダラクの街に帰還してビックした。

 街の広場の市場バザールに、前より商品が並んでいるのだ。


 しかも買い物に出る市民の数が、以前よりも増えていた。


「この調味料をください!」


「ウチにもください!」


「あいよ! まだ沢山あるから、焦らなくてもいいですよ、みなさん!」


「ママ、あれ……美味しそうだね……」


「そうね。今日は買ってあげるわ」


「本当! 嬉しい! うん! 美味しいね、ママ!」


 市場バザールにいる市民たちには、笑顔があった。

 少し前までは絶望で下ばかり向いていた人たちが、今は前を向いて歩いていたのだ。


「す、すごい、これは!」


 ボクは何度も興奮。


 話によると、これはマルキン商会のお蔭。

 彼らはユフクの街で、必要な物資を大量購入。


 倉庫の転移門で、ダラクの街のマルキン商会の倉庫に転送。

 そのままダラクの街の各商店に、商品を流通させているという。


 あとユフクの街には、マルキン商会の人たちが何名も残り、支店を作っている。

 だから互いの街の特産品を、スムーズに購入と売却が可能になった。


 ボクたちがユフクの街から戻ってくる短期間で、ダラクの流通を変えてくれていたのだ。


 そんな驚いている時、当人マルキンさんが近づいてきた。


「あっ、マルキンさん! この度は本当にありがとうございました!」


「いえいえ、何を言っているのですか、ハリト君。これは全て貴方の功績ですよ」


「えっ……ボクのですか?」


「そうです。私が行ったのは、あくまで商人として普通のこと。それに比べてハリト君の転移門は、流通そのものを革命的に変えてくれました。お蔭で市民の暮らしも、少しずつ改善されていきます。感謝します」


「ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しい。あと、頭を上げてください、マルキンさん! ボクは冒険者として、当然の責務を果たしただけなので!」


「そうですか。それほどの力と英知を持ちながら、ハリト君は本当に謙虚ですね」


「あっはっはっは……無自覚すぎと、ゼオンさんにはよく怒られますが。あっ、そういえば転移門に何か不都合があったら、いつでも声をかけてください! 機能ももう少しグレードアップできるように研究しておきます!」


 ボクの力不足で転移門は未完成。

 今はまだ物資しか輸送はできない。

 あと人や生きた家畜も転移できない。


 それに扉の大きさも、それほど大きくない。

 そのため大きな荷車や荷馬車を使って、効率的に移動させることも出来ない。


 だから転移門を境にして、小さいに荷物を手作業で、互いに受け渡しする必要がある。

 これがけっこう非効率的な作業。

 そのため膨大なダラク市民の物資を、一気に運搬することが難しいのだ。


「むむ? その言い方だとハリト君。あの転移門は、更にグレードアップすることが出来るのですか⁉」


「あっ、はい。将来的には、人や生き物も通行可能に。あと荷馬車も通過可能にしていく予定です! あっ、もちろんゼオンさんの許可を取ってからですが」


 危ない、危ない。

 また『お前のグレードアップは危険すぎる! 必ずオレに確認しろ!』って怒られちゃう。


「な、なんと⁉ そんな夢のようなことが⁉ もしも、それが叶ったら、このダラクの街は本当に元通りに、あの笑顔と活気が溢れる街になれます。ハリト君! 私はこれからも協力の手を惜しみません! どうぞ、よろしくお願いします!」


「あっ、はい、こちらこそよろしくお願いします、マルキンさん!」


 マルキンさんと固い握手をして、その場は分かれる。


「ふう……さて、ボクもギルドに戻るとするか」


 ゼオンさんや他のメンバーは、先にギルドに戻っていた。

 前より活気を戻してきた街並みを見ながら、ボクはギルドに向かうことにした。


 ◇


 ギルドに無事に帰還。

 ゼオンさんたちは事務仕事をしていた。


「随分と忙しそうですね、ゼオンさん?」


「あん? あっ、ハリトか。そうだな、どこかの誰かさんのお蔭で、盗賊の懸賞金やら、マルキン商会からの収入も増えたから、事務仕事が増えたんだよ!」


「あっ……もしかして……なんか、ごめんなさいです」


「はっはっは……冗談だ。お前のお蔭で、ギルドの収入が一気に増えてきた。全員が感謝しているから、気にするな、お前は」


「ふう……そうだったんですか。脅かさないでくださいよ、ゼオンさん」


「だが何か新しいことをやる時は、必ず確認を取ってから行え。特に攻撃魔法は、だ!」


「あっ、はい、肝に命じておきます」


 ゼオンさんは相変わらず、ボクに厳しい。


 でも全部、未熟なボクのために言ってくれていること。

 半人前で駆け出しの自分のために、あえて厳しくしてくれているのだ。


「さて、みなさん、忙しそうだな。ボクは……玄関の掃除でもしておこうかな?」


 掃除道具を持って、玄関に向かう。

 本当は【完全解呪エクス・ディスペル】を広域発動させたら、ギルドは一気に綺麗になる。


 でも魔法の乱用をしたら、またゼオンさんに叱られてしまう。

 今は駆け出し冒険者のように、コツコツと掃除をしていこう。


「よし、掃除をやるか! ん?」


 ――――そんな玄関で掃除していた時だった。

 誰かがギルドに入ってくる。


「ふん。相変わらず薄汚くて、ゴミ共の巣窟だな、ここな?」


 やって来たのは、金属鎧を着た男の人。

 雰囲気的にダラクの騎士かな?


 でもギルドに対して口調は悪く、かなり視線も鋭い。

 後方には部下の兵士が、数人控えている。


 いったい誰だろう、この人は?


 その騎士の姿を見て、仕事中のゼオンさんが顔を上げる。


「ハンス……か? 何の用だ?」


「この私が“こんな場所”に来るのは、仕事の依頼に決まっているだろうが、ゼオン?」


「ああ、そうだな。それじゃ、今回のクソッたれな依頼を聞いてやる」


 ピリピリした雰囲気の二人。

 何やら因縁がありそうだ。


「相変わらず口が悪いな、冒険者は。さて、依頼内容は簡単だ。前と同じように、北の城壁の夜間警備だ」


「やっぱり、そうか。また、あのクソッたれ場所の仕事か……」


“北の城壁の夜間警備”と聞いて、ゼオンさんの顔が急に曇る。


 雰囲気的に、よくない仕事の依頼らしい。


 どうなるんだろう、心配だ……。

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