第2話 私がおばさんになっても

今日は我が家に台風がやってくる。



10個上の従姉妹の美歩ねーが、息子と我が家に来る。

美歩ねーは、ママの姪っ子。

そして、その息子・・・この優斗が台風なのだ・・・

確か5歳だっけ?

生意気で、俺様なのだ・・・


ハァ~ため息をつく私に、ママが

「茉奈~そろそろ来ると思うから、さっさと食べてかたずけてよ」

と声を掛けてくる。「うん。」と生返事をする私に、忙しそうに動きながら、

「返事は、はい。何回言ったらわかるのよ~」と言ってきた。

「はい。はい。」と言った私の方をチラりとみて、

呆れた顔で「もう~あんたって子は~」と言いながら、バタバタと動いていた。


ハァ~

ママはわかってないよ。優斗の恐ろしさを・・・気が重いっつうの!



ピンッポン~

玄関のチャイムが、響いた。

来たよ~台風がやってきた・・・ハァ~

今日はどんな台風を起こしてくれることやら・・・


「茉奈~出てよ」そう言ったママの言葉に無言のまま、ボリボリとシリアルを食べている私に、ママが大きな声で「茉奈っ!!」と呼んだので、「・・・わかった!わかったから・・・」そう言って、重い腰をあげて玄関に向かった。


玄関のロックを外して扉を開ける。


「あ~茉奈~おはよ~!!」とキレイな笑顔で言ってくれる美歩ねーに、私も笑顔で「美歩ね~おはよ~」と言った。

優斗がひょっこと美歩ねーの後ろから顔をのぞかしてニッカッと笑う。

「おはよ。優斗」と声を掛けると、これまた、可愛らしく笑う優斗。

こうやって見てる分にはいいんだよね。イケメン君でさ・・・・・

そう思っていると、「まな~」と飛びついてきた。

「お~~っと。優斗!飛びついたらたおれちゃうでしょ~」

エヘヘとかわいいく笑う優斗・・・

「優斗は茉奈のこと、本当に好きだわ~昨日もさ~拓に茉奈の家に行くって、嬉しそうに話してたわ~」

とキレイに笑う、美歩ねー。


いやいや、私は拓さんの方が会いたいよ。と思いながら、

ハァ~~~~と小さくため息をつく。

本日、何回目のため息だろうか????


ワンワン!!としっぽをブンブン振りながら、目をキラキラさせている愛犬のくぅー。

くぅーもうるっさくなるだろうし、今日は最悪だ~~~~~~~~~~~~~ぁ!!!!


くぅと戯れる?優斗・・・いや、違うな・・・くぅがおもちゃにされてる感が・・・

それでも、くぅは優斗が好きっぽいからいいか?


「ちょっと!茉奈」とママがテーブルに、冷たいお茶を置きながら、少しイラついた声で私を呼びながら、美歩ねーに「美歩おはよう」と言って、優斗にも声を掛けてる。

「何?」と私もイラついた言い方で聞くと、「早く片付けてよ」と言い、優斗と何やら話をいている、「まだ途中だもん」と答えると「さっさと食べなさいて言ったでしょ!」と言ったママに「ご飯ぐらいゆっくり食べたっていいじゃん!」と言う私をチラリと見て、ブツブツ言うお母さんを見ながら美歩ねーが笑ってる。

「夏休みだし、朝もゆっくりだよね」と私に優しく笑いかけてくれる。

やっぱり、美歩ねーは優しい。

「美歩。甘やかさないでよ。最近、本当にだらけてるんだから」

と何かブツブツ言ってる。

「紗枝ちゃん。私も茉奈ぐらいのときは毎日が眠かったし、ダラダラしてたよ」そう言う美歩ねーに、「そう?」と言いながらも、本当にも・・・とブツブツ言ってるママ。

「紗枝ちゃんも、そうだったんだって!きっと、おばあちゃんは同じこと言うような気がするけど」と笑った。

「そんな、昔のことなんて忘れちゃったわ~」そうだったのかしら?とブツブツ言うママ・・・


そんなママをと美歩ねーの会話を聞きながら、ボリボリとシリアルを食べながら、『早く起きろ。て昨日はバイト、ラストだったから、いつも以上に眠いのに・・・』と心の中で呟いた。

ハァ~とため息をついた。何度目のため息だろう?

幸せ逃げちゃう・・・ダメだ!しっかりしろ茉奈!と自分に気合を入れた。


「まな~外であそうぼうぜ!!」と優斗に「やだ。暑いから絶対にやだ!」と言った私に「え~まなはケチだな」としょんぼりする優斗。

こういう姿は子供で可愛いけどな~・・・くぅにしゃべりかけている優斗を見ながら考えていると、「くぅもいきたいって!」と言う優斗。

いやいや。優斗くん犬を使うのは卑怯だよ。それに、くぅはこの時間はどう考えても無理だから・・・暑いよ。

「優斗。くぅはさー背が小さいから今の時間は暑いの。それに、靴履かないから足ヤケドしちゃうよ」そう言うと、少し考えたように・・・

「じゃーくぅにくつかってあげる!」靴か・・・確かに靴履けば足はヤケドしないけど・・・子供ってちゃんと、考えてるんだな。と思いながら「だとしても、今日は靴買いにいけないよ。だから、無理だよ」

「えーーーー」と不満そうな顔をで、くぅに話かけてる優斗は可愛い・・・

あきらめたのかと思いきや!唐突に・・・

「まな~じゃーライダープール行こう!」

「はっ?プール?ライダープール?」この展開はなんだ?

「うん。」と満面の笑みを浮かべる・・・いや、その笑みは卑怯ですよ・・・

しかし、プールときたか・・・それもライダープールってなんなんだ?????

わからん・・・

子供の頭の中ってどうなんてるんだろう?????そう考えてると、

美歩ねーが「優斗。今日は行けないよ。プールは父ちゃんとね。」

となだめてくれる。「え------」と残念そうに、する優斗をよそに、美歩ねーに聞いた。

「ライダープールって何?」

「スライダーのことだと思うよ。この間ねジャンボプールに拓が休みの時に行ってね、楽しかったみたいで、また行きたい!てずっと言ってるの。」

「ふーん。優斗スライダ滑れるの?」

「大人と一緒だとOKなのがあってね、それに行ったみたい。」

私と美歩ねーがしゃべってる間にママが「洗濯干してくるわね」とリビングを後にした。優斗はブツブツ独り言のように『かーちゃんもまなもケチだなーとうちゃんはしごとだからむりなのに・・・』とくぅにしゃべてる。


美歩ねーが「そういえばさー去年、拓と海で会ったんだよね。」と訊ねてきた。

そうだった。去年の夏、海の家で拓さんにバッタリ会った。

「うん。会った。あの時、拓さん水着で一人だったからびっくりした。拓さんもびっくりしてて、すごい慌てたから愛人とでも来てんのかと思った」と笑うと、

「愛人って!」ケラケラと美歩ねーも笑った。

「拓がね、茉奈が大人の女でびっくりして動揺したんだって。」とクスクス笑う。

「!大人の女・・・」その言葉にびっくりして、声が少し上ずった。

拓さんにそんな風に思われてたんだ・・・

美歩ねーは、笑いながら「そう。あの日ね。拓の学生時代の友達と海でBBQでね、私も優斗も行く予定だったんだけど、優斗が熱出したから拓が一人で行ったんだけどね、」

「そうだったんだ。」

「そう、でね。」と言ってクスクス笑う美歩ねー

「拓が茉奈に会ったあとね、バツイチの同級生がね茉奈達を見て『可愛い』て騒ぎ出してナンパしよう。って話になったらしくて、」

「は!?ナンパって・・・美歩ねーも行く予定ってことは他の人の奥さんや彼女も同伴ってことだよね?」

「そう。奥さんや彼女からは当然ブーイングの嵐だったみたいでね、拓も茉奈が心配で『あの子はダメだ!』て言ったら、『お前の愛人か~』てからかわれたんだって。(笑)」

「え----そんなことがあったんだ・・・男ってバカだね~」

「ね~ホントに・・・でね、私の従妹だから、絶対にダメだ。って言ってもからかわれて、散々だったらしいよ。」とクスクスと笑う美歩ねー。

拓さんは本当に美歩ねーを大切に思ってるの知ってるし、私の事も妹みたいに思ってくれてるのも知ってる。

「でね、」とクスクス笑いながら話を続ける美歩ねー。

「帰ってきて、その話聞いてね、その後さー内は優斗が男でよかった。て言うかね。なんで?て聞いたらさ、茉奈みたいに女の子だったら心臓が持たない。っだってと笑う美歩ねー。私も思わず笑ってしまった。

美歩ねーの大きくなったお腹を見て、「ね~今、お腹にいる子が女の子だったら大変だね。」とクスクス笑うと「たぶんね、女の子みたいでね。拓に言ったら『嫁に行かせない』だって」美歩ねーがケラケラと笑った。

私も思わず飲んでいたジュースを吹き出しそうになった・・・

「拓さん・・・でも、拓さんみたいなお父さんなら、一緒に買い物とか行きたい~」

「本当!?」

「うん。だってさ~オシャレだし、カッコイイしさ、背も高いじゃん。自慢のお父さんだよ。絶対に!!」

笑いながら美歩ねーは「喜ぶわーきっと」と呟いた。


本当に、自慢のお父さんだと思うけどな~

いや、拓さんみたいにオシャレでかっこよくて、背も高くてスポーツも得意な人。

そんな人と私も結婚したいよ。

美歩ねーがうらやましすぎる。


「美歩ねーにとっても、自慢の旦那さんじゃないの?」

そう訊ねると、「う~ん。そうだな~」と少し考えこんで、

「ま~そうかもね~もう何年も一緒にいるからな~これって!言えるような自慢はないけど、友達とかの話を聞いてると、そんなに愚痴もないし、そうなるかも。」

「そんな感じなんだ・・・何年もいるとそんなもの?」

「そんなものじゃないかな~別に不満とかはないし、幸せだしね。」

「ふ~ん」

そんな感じなんだ~としみじみと思う。

「ねー茉奈は彼氏とどうなの?」

名前なんだっけな~背が高くて・・・・・と言う美歩ねーの言葉に重ねて

「5月に別れた」

「え!そうなの?」と目を見開いてびっくりしてた。

「うん。」

「なんで?仲良さそうだったし、優しそうだったのに」そう訊ねてくる美歩ねーに、少し考えて、「う~ん。性格の不一致?てやつかな~」

「性格の不一致って・・・夫婦じゃないんだから・・・まーあるか・・」

「なんかね。高校時代の元カノと再会して、元カノの家が大変なことになって助けあげたい。って言われたの、」興味深々に、うん。うん。とうなずく美歩ねー。

「でね、私も時と場合によるけど、気持ちはわかるから大人になって目つぶったの、そしたらさー元カノが『あの人私に返して』て泣きながら、彼氏の携帯から電話してきてね、その後2人で話したら、彼は『寄りを戻すつもりはないけど、一緒にいてあげたい。』って言うから、そこは、無理。って言ったら『そんな分からず屋だと思わなかった』て言われたの。でね、それは、こっちのセリフだっつの!って思いながら、だったら一緒には居れないね。って話になって別れた。」

「ふ~ん。男って変な優しさ持ってるよね~」

ホントにそれ!それは優しさではないよ。

「で、後悔してないの?」

「うん。全然!逆に私って本当に好きだったのかな~って思うぐらい」(笑)

「なら、いんじゃない。」てキレイに笑う美歩ねー。

拓さんも美歩ねーも【美男美女】だよな~

「は~私にも拓さんみたいな人現れないかな~」

「え~!?拓みたいな人?」

「うん。拓さんって、私の理想かも?」てケラケラ笑う私に美歩ねーも笑いながら、

「拓に言っとく、喜ぶと思う」と笑ってくれた。


「まな~」

あ!優斗忘れてた・・・。

「きて~!」

「はい。はい。」

美歩ねーと顔を合わせて、笑いながら「お外とプールはあきらめて今度はなんだろうね」と呟いた。


「優斗。なに?」と優斗の元に行くと、「これ。」と見たこともない怪獣を指さして「このかいじゅうは・・・」と説明された・・・

そして、一通り説明が終わって、唐突に優斗が聞いてきた。

「まなはとーちゃんがすきなのか?」

「うん?拓さん?」そう聞くと、うん。と首を縦に振る優斗。

「うん。好きだよ。」ダメかな?っと首を傾げながら聞いてみると、

「ダメじゃないよ。でも、とーちゃんはかーちゃんがすきだから、まなはゆーとでいい?」

「??うん?優斗のことも好きだよ。」っと笑って言うと、

優斗もニッカっと笑って「かーちゃん!!おれ、まなとけっこんするぅ!!」

?!

みんながびっくりして、目を見開いた。


そして、

洗濯を干し終わって、リビングに戻って来た、お母さんは爆笑。

もちろん、美歩ねーも爆笑しながら「優斗、本当に茉奈と結婚するの?」

と聞きながらも笑ってる。

優斗本人は、ニコニコしながら「うん。」と頷き、

「だってさ、まなはとーちゃんがすきだっていうけど、とーちゃんにはかーちゃんがいるから、おれがとーちゃんのかわりになる!」

とこれでもか!とばかりの決め顔で言い切った優斗。

へっ!?

そういう事ですか・・・

もちろん、みんなで爆笑した。


優斗にはまだ、結婚とか人を好きになる事の意味はわかんないよね。

そう思いながら、優斗に声を掛ける。

「優斗。茉奈は優斗より、うーーーーーーんと!年上でおばさんだよ?」

と私が言うと、可愛く首を傾げながら、「おばさん?」と聞き返した。

私が「うん」と首を縦にふると、

ニカッと笑い、「まなはおばさんじゃないぞ。かわいいぞ。」ともう一度ニカッと笑う。


お母さんも美歩ねーも笑ってるし、お母さんは涙まで流してる・・・


「ありがとね。優斗。」と頭を撫でると、反則的な笑顔を返してくれた。

もう一度、心の中で優斗に『ありがとう』と言った。


優斗。

あなたが結婚の意味を理解し、結婚出来る年齢になっても「おばさんじゃないぞ。かわいいぞ。」と笑顔を見せてくれますか?

私が本当のおばさんになっても・・・



日向 茉奈 19歳3週間



【私がおばさんになっても】

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あの頃のわたしたち 凜架 @Majyorika

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