第7話「大は小を兼ねず」
サラリイマンが再び横を通ったところで、私はアイスカフェオレを飲み干した。そして、理由もなく嘆息する。
理由など必要なかった。むしろ、嘆息のための口実を探しながら生活しているようにさえ感じた。ネガティヴな印象を作り出すだけの非生産的なその行為を、私は毎日数えきれないほど積み重ねている。何かに取り
音楽でも聴いて気を紛らせようと鞄に手を伸ばした矢先、膀胱からの新着通知を受信した。
緊急ではないものの、開いてしまった以上はできるだけ早い対応をせねばという気持ちになり、私は席を立った。もとより、間隔の長い部類ではなかった。今日はアイスカフェオレに続いてお冷やをも短時間に摂取したため、受信が早まったのも頷ける。幸い、トイレはすぐそばだ。前方に十歩ほど進み、右側が女性用、左側が男性用。トイレから最も近いという点でも、前列左端は優れたポジションだった。
トイレに入ろうとした瞬間、常連の冴えないメガネ男子が早足でこちらに向かってくるのが目に入った。
トレイを持っていないので店を出るわけではなく、彼もトイレに用があるのだろう。それも、腸からの通知を受け取ったものと予測できる。安心したまえ、奥はあけておくと脳内で呟きながら、入って右側の小便器に向かって立ち、下着とズボンをおろす。
その数秒後、扉が開いた。
案の上、そこには黒スーツの冴えないメガネ男子の姿があった。サァ奥へ行き
不可解だ。なぜにこのメガネ男子は、私の斜め後方で突っ立っているのだろう。個室は目の前だ。そのまま進めば一件落着、それなのに
融通が利かないで済めばまだ良い。だが彼の愚直は、私の排泄に今まさに支障をきたしている。出ないではないか! 膀胱の感情とは裏腹に、脳は斜め後ろの不自然な物体に神経を乱され、液の放出を命じられずにいる。いや、命じてはいるのか。その言葉はしかし宙に浮いたまま、私のそれへは届かない。
私は、観念して下着とズボンを履き、奥の個室へと移動する。
メガネ男子が、
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