荒魂-002 芸術テロリスト

【概要】

 荒魂-002は竈神の絵が人食いの怪物と化す中国の民話を元にした、旧日本軍の兵器です。


 宇賀神健介軍医中佐と、清王朝の呪術師富察王龍フチャワンロンを中心に関東軍防疫給水部で開発されました。


 民話における竈神の絵は、絵に滴った人の血をきっかけに人食いの妖怪と化し、ある気丈な嫁を襲おうとしたところ、柄杓で水を掛けられ退治されたと伝えられています。

 荒魂-002はこれに防疫給水部が科学を加えることで、描画ソフトのようなものを開発。デジタル上に描かれた竈神の絵を実体化することに成功し、対象は防諜のための符号を交えて『試製高柳式カ号有線電送受像兵器』と呼称されていました。


 これらの特性により、荒魂-002は電流となって移動し任意の空間で実体化及び人を補食する性質を獲得していましたが、水の弱点は残存していました。

 その後、いったん旧日本軍に破壊されたものをソ連軍に回収され何らかの修復を受けた結果、電波となって移動する能力を得て水の弱点を克服。代わりに壁面でしか実体化できなくなり、塗りつぶされることで一時的に無力化される弱点も付随したと推測されています。



【関係組織】

『731部隊』

 宇賀神健介が本来属していた部隊。彼はここで関東軍の意に添わない独自の研究を進めたため、追放された。


『7121部隊』

 独自の研究がそれなりの成果を上げていたことで、宇賀神健介が新たに任された小興安嶺支部の秘匿名。小規模な予算で切り捨て同然の扱いであったが、陸軍科学研究所登戸出張所の支援で運営体勢が整っていた。


『陸軍科学研究所登戸出張所』

 神奈川で御霊関連研究も行っていた施設で、宇賀神健介の研究を高く評価し後ろ楯となったと。


『黒木部隊』

 関東軍情報部が派遣した、黒木康博大尉を隊長とする分隊。軍との連絡が途絶えた小興安嶺支部を調査に向かい、ソ連軍との衝突で壊滅した。



【関係者】

『宇賀神健介』

 関東軍防疫給水部軍医中佐。731部隊時代に御霊研究に没頭したため班を解体され、小興安嶺支部へ事実上左遷されるがそこで頭角を表し内地登戸出張所からの支援も得て、支部の最高責任者となる。捕虜から富察王龍を見出だし、荒魂-002を完成させた。対象を巻き込んで自爆した。享年58歳。


『富察王龍』

 代々清王朝に仕えてきた宮廷呪術師、富察家の末裔。方術に秀でていた。娘が一人いたが行方不明。本人は戦後、毛沢東に荒魂-002の修復を依頼されたが拒否。拷問されたが死ぬまで口を割らなかった。享年82歳。



【経緯】

 昭和20年8月██にち、情報部は荒魂-002の敵に奪われる前の破壊を命令。宇賀神中佐は対象と自爆し、ソ連軍が残骸を回収しました。


 ソビエトは冷戦中、中国が王龍から奪った技術を取引し、修復を試みましたが失敗。連邦の崩壊と共に、荒魂-002は脱走しました。

 以後、対象は電波の状態で移動し、任意の壁面に竈神を象った絵として出現。触れた人間を補食する能力を得ています。


 絵を塗り潰すことで無力化できますが、本体は電磁波となって逃走、いずこかの壁に再び転写されるため、完全な対処には至っていません。

 当会は、荒魂-002の電波追跡には成功し、世界中でその出現に速やかに対処、竈神の絵を塗り潰す偽装芸術家チームを構成しています。


 コードネームは、バンクシーです。

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