奇魂-001 母なる空
【概要】
奇魂-001は、ファフロツキーズ(Fafrotskies)として知られる現象のうち、生物的なものの原因となる有機体です。上空で発生し水棲の種を中心とする生物の形状をとり、降下時に一部が雨水へと液化する以外に共通点は見られません。
以下は、当会独自の情報収集に成功した奇魂-001の記録です。
【事例】
①1859年2月11日。イギリス、南ウェールズに数千匹のミノー(Minnow)とトゲウオ(Stickleback)が降った。
別任務で付近にいた飛行船の調査隊が対象の降下情報を地上の当会より取得、現場に赴き降下前の奇魂-001を発見した。対象はダチョウのものと見られる卵数百個で、魚へと急成長し、雨水となった一部と共に降下した。
②1876年3月3日、アメリカ、ケンタッキー州で大小様々な赤身肉の断片が降った。
気球を用いた一般市民が偶然降下前の対象に遭遇。奇魂-001は子馬の身体に人間の赤子の頭部を持つ生物数体で喃語を話し、緩やかに崩壊して肉片と雨水になり降り注いだとされる。接触した市民には聞き取り調査のあと記憶処置を施した。
③1968年8月27日、ブラジル、カカパヴァとサンホゼカンポスに血液と大小様々な生肉が降った。
奇魂-001が対話可能な形体で、かつ対象とのコミュニケーションに成功した唯一の事例。(事象-001参照)。
④[編集済]
【事象-001】
ドローンが降下前の奇魂-001を発見。対象は身体的特徴が様々な老若男女の人間で対話が可能であったため、インタビューが試みられました。以下は記録です。
補足: 日系二世の██研究員が最初に反応して以降奇魂-001は日本語を話すようになったため、現場で唯一同言語を扱えた彼が引き続き対応しました。
██研究員「失礼します。我々はこの一帯を調査していた者ですが、あなた方は何者ですか?」
奇魂-001-1「勝手に入ってきたくせに何様だ?」
(奇魂-001-1は両性具有の黄色人種で男性的な成人シャム双生児であり、上半身が二つある個体の片方である)
██研究員「ここはあなた方の所有する場所だということですか?」
奇魂-001-2「はあ? んなわないでしょ。うちらが育つ場所よ」
(奇魂-001-2は奇魂-001-1と下半身を共有するシャム双生児のもう片方であるが、白人で乳房を持ち女性的である)
██研究員「ここで生まれ育ったということですか?」
奇魂-001-3「質問ばっかね。まあ、わちきは完全養殖よ。他はいろいろだけど」
(奇魂-001-3は同年齢時のリナ・メディナ※5歳での出産記録を持つペルー人女性※に酷似した5歳前後の妊婦のようである)
██研究員「養殖とはどういうことですか?」
奇魂-001-4「知らないで入ってきたのか? お蔭でみんなまた廃棄されちまうのに」
(奇魂-001-4は視認できないが、奇魂-001-3の下腹部から音声が確認されるため胎児と思われる)
██研究員「ここは、何者かが築いたあなた方の養殖場だというのですか?」
奇魂-001-5「さよう、水産物はそう呼ぶじゃろう。異物が入れば廃棄されるのだ、鳥でも飛行機でも埃でもお主らでも同様。下でも汚染されればダメになろう」
(奇魂-001-5は単眼症かつ多毛症であり、人種性別共に不明な老人的である)
██研究員「確かに水棲のものが多い傾向にありますが、あなた方のように違うものも――」
奇魂-001-5「みな海から出て増えたろうに何をぬかす、母なる海などと言うじゃろう。[編集済]」
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【事例⑤】
2001年7月25日~9月23日、インド、ケーララ州に、赤色を中心とした生物の細胞に近い粒子を含む雨が降った。
無人偵察機が赤色の液体が発生する瞬間を捉えた。対象は雨水となって降下。変化途上でなく虚無からの出現を確認したため、奇魂-001の原形に近いと思われる。
2003年よりマハトマ・ガンジー大学のゴドフリー・ルイらが、本件について彗星由来の極限環境微生物を原因とするパンスペルミア説(地球生命の起源を他の天体で発生した微生物の芽胞が隕石などで到達したものとする説)の証拠との推測を提示したため、奇魂-001の本質に接近したと判断。地球科学中央研究所(CESS)を後押しする形で、偽装分析『雨により急成長した気生微細藻類に属する地衣類の胞子が混入』を流布した。
生命の起源を宇宙まで遡る必要はないかもな。事象-001から除去した奇魂-001の発言は以下だ。
- ████博士
奇魂-001-5「生物は全て、40億年ほど前にここから捨てられた成れの果て。6600万年振りくらいに、岩でも落として掃除すべきか」
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