VSランチ!
「いらっしゃい! おお佳桜美ちゃんじゃないかー!」
「こんにちはー! そば食べに来たよぉー!」
「うぃー」
「おっ、弧雪くんも一緒か! おい
俺たちがやってきたのは図書館からも駅からも割と近いが、大きな通りから一本中に入ったところにある定食屋さんだ。その名も定食屋
紺色に堂々と白い文字で定食屋輪谷ののれんがあって木の枠にガラス張りのカラカラ~って音が鳴る引き戸が入口な昔ながらの定食屋っていう感じだが、実は同級生である
白い半そでの服にねじり鉢巻装備のおっちゃん。もうね、うん、ザ・定食屋のおっちゃんってところだよな。ここも文房具屋に匹敵するくらい歴史あるとこなんじゃなかったっけな。
「おぉ斉琳寺さんとこのー」
「こんにちは~」
右前のテーブル席でカッターシャツ装備のビジネスマン的な男の人四人がいて、そのうちの一人が佳桜美に声をかけた。それを見たほかの三人も会釈した。やはり斉琳寺家は有名なのか。
カウンター席に……大学生くらいの人? 赤と白のチェック柄のシャツの男の人がいる。この人は特に反応がなかった。
俺たちは入ってすぐ左のテーブル席へ座ることにした。
座る前に俺が慣れた手つきで荷物置き用に積まれたバスケットを持ってきて、紙袋を入れポシェットと麦わら帽子も容赦なく奪って入れた。
「優しい~」
シカトシカト。四人掛けの大きさなのだが、当然かのごとく俺の向かいじゃなく右隣に座ってきた佳桜美。
「あらいらっしゃい! 泳蔵にも食べさそうと思ってたところなのよー。一緒に食べる?」
藍色の
青い
「私はいいよ! このちんもいい?」
「ああ」
「そうかい! じゃメニュー決めてね!」
テーブルの端に立てられたメニュー表を佳桜美に取ってもらい、二人で眺める。プラスチックの板に白い紙が挟まっているやつ。
そしてこのメニュー表を見れば、なぜ俺たちがここへやってきたかがよくわかる。それはなんと
『ごはんどなたでも大盛り無料! 学生・子供なら麺・具の大盛りも無料!』
なに? ただの大食いじゃねーかって? その下を見ろ。
『学生・子供ならお会計から350円値引き!(ただし150円を下回るときは150円払ってね)』
この恐ろしいほどの
ほんとは学生証や名札とかを出さないといけないのだが、息子と同級生ってことで中学生なのは丸わかりである。まぁ学生手帳自体もポシェットに入ってんだけどさ。
「泳蔵~、佳桜美ちゃんたちと一緒に食べに下りておいで~」
っていう声が聞こえながら俺たちはメニューを眺めたが、まーた肩を当ててくる佳桜美~。
「どれする~?」
「さっき登場シーンでそばとか言ってたのはどこのどいつですかね?」
「ふふん~」
ほんと何してても楽しそうだな。
「おっちゃん俺カレーうどん大盛り本日の小鉢セット炊き込みご飯大盛りで! 具いっぱい入れてくれ!」
「うは! あいよ!」
おっちゃんも思わずうはとか言う量だけど大丈夫かって? 余裕すぎてうちわあおぐわ。
「私きつねそば大盛りおあげ追加あんみつポテサラセット炊き込みご飯の水ようかんつきで!」
「うはっ! あいよ!」
ちなみに今回のうはっ! にはおっちゃんだけじゃなく俺の声も含まれている。あれ、一瞬大学生っぽい人がこっち向いたような。そしてビジネスマン軍団のだれかが「んぐふっ」って吹いた気がしたが気のせいかな。
「やあ、いらっしゃい」
「うぃー」
「こんにちは~」
赤い半そでシャツに黒い綿パンの泳蔵がやってきた。身長は高めだが細め。バスケ部だったかな。自分で湯呑にお茶をついできたようで、俺の前の席に座った。
「今日もたくさん食べていくのかい?」
「そりゃーここコスパいいしな! なぁ佳桜美」
「うん! ここのそばおいしいよね~」
「今後ともごひいきに~」
……にしても佳桜美、ランチランチ言ってなかったか? これじゃ昼メシって感じだぞ?
(まぁここを言い出したのは俺なんだが?)
だって図書館って駅に近いんだもん!
「弧雪くんお待ちどうさまーっ」
「うおっしゃー! 手を合わせましょぺったんいっただきまーす!」
「うはー、食べるねぇ……」
「そしてはい佳桜美ちゃんっ」
「わーい! いっただっきまーす!」
「斉琳寺も結構食べるよなぁ」
「あんみつとようかんは後で持ってくるからね!」
「ふわーい!」
「うはー。めちゃくちゃ食べるなぁ……」
泳蔵は炊き込みご飯とみそ汁漬物海草サラダという内容だ。そこは炊き込みご飯大盛りに海草ダブルのみそ汁をかけうどん変更にするべきだろうよ!
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