ひきだしに届いた手紙 十通目
宝石箱の向こうの貴方へ
お返事有り難うございます。
速読っていうのは、貴方の推測通り本を速く読むことなんだけど、多分貴方の想像以上の速さだと思う。
速読は、本をパラパラパラァっとページをめくるだけで、本を読めちゃうの。
理屈的には、文章の全てに目を通すのではなく、サッと読んだところの内容で、前後の文章を推測するらしいんだけど、ボクも出来るわけじゃないから、本当はどういう感じなのかちょっと分からないや。
ボクからの転写を宝物だと言ってくれて嬉しいな。
ボクも貴方からもらった転写を大切にしています。
で、新しい寄せ植え造ってみました!
ピンクのチューリップと、白のガーベラ、青の勿忘草。サポート役の勿忘草の色を、メインのチューリップの反対色にしてみました。大分冒険してみたけど、造ってみると、これも有りだと思う。
転写を送ります。
お菓子の転写見ました。
ティーガっていうのは聞いたことないけど、転写を見てすごくケーキに似てるなと感じました。
ケーキっていうのは、小麦粉っていう穀物の粉と卵を混ぜて焼いたもので、その上からクリームや果物を飾り付けるの。
名前は違うけど、同じ様なお菓子があるんだね。
こちらもケーキの転写を送ります。
それと、ボクの国のお菓子も紹介します。もう一枚の転写ね。
これは柏餅。お米の粉、上新粉で作ったお餅の中に、豆を甘く似たあんこを入れるの。で、それを最後に柏の葉っぱで巻いて完成。食べる時には葉っぱは取ります。葉っぱは飾りなの。
ボクの国の伝統的なお菓子は、クリームよりもあんこを使います。
隠し事しながらの平常心て大変だよね。わくわくする隠し事なら、楽しいんだけど。
書こうと思ってる内緒の話も、隠し事でもあるんだ。
あのさ、これも恋愛の話なんだけど、ボクにも好きな人がいるんだ。
前に手紙にも書いた、同じ図書委員会の先輩。明るくて、誰とでも仲良くなれて、頭が良くて、優しい、素敵な先輩。
それでね、先輩はボクと同じ女の子なの。
だから、初めはただの憧れなんだって考えたんだけど、先輩と一緒にいればいるだけ、どんどん好きになって、ただの憧れなんていう言葉では収まらなくなっちゃって、諦めて恋なんだって認めたんだけど……。
やっぱり変だよね。
先輩とどうなりたいとか思ってるわけじゃないんだけど、今はまだこの想いはいなくなってくれなくて、ちょっとだけ辛いかな。
ごめんね。言葉に甘えて書いたけど、良い気分じゃないよね。
嫌だったら忘れて、次の手紙では無かったことにしてね。
どうか、お返事待ってます。
宝石箱のこちらから
Letters 橘月鈴呉 @tachibanaduki
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