第15話 いいものがあるんだけど 前編
今日も自然に目が覚める。
昨日もぐっすり眠れた。
……よっし。朝練行くか。
着替えをして学校の用意をして、自分の部屋から出る。
昨日の朝と同じ静かな廊下。
それもそのはず。昨日夏織ちゃんと話して、これまで自分が起きてた時間に起きることにしたからだ。
そのほうがお互い、気も体も楽だろうし。
次、身だしなみ。
洗面所へ行き、顔を洗い髪を整える。
ここでポイントが一つ。鏡は見ないこと。
朝の貴重な時間を浪費しかねないからだ。
……いや、無駄遣いではないけど。二の轍は踏まない。
次だ。
キッチンに行き、弁当箱におかずとご飯を詰める。
その後、水筒にお茶を詰める。
これで朝の準備はほぼ終了。
あとは朝ごはんを食べたら学校に——っと。
そうだった、危ない危ない。
昨日の話で、洗濯機は俺が回すってことになったんだった。
ちょっとでも俺にできることはやりたくって。
ご飯を食べる前に済ませよう。
一旦、弁当と水筒を自分の部屋に置いてから、再び洗面所に移動する。
流石の俺でも洗濯機の回し方くらいわかるぞ。
それに夏織ちゃんの家にあるのは自動で洗剤を投入するタイプで、より簡単らしい。
まず電源を入れて、
洗濯するものを入れて、
スタートボタンを押せば、
……ぐ、しまった。
そうか。
”洗濯機を回す”、とはこういうことになるのか。
まさかの、第二ラウンド勃発だ。
洗濯カゴの中身を洗濯槽に入れていく俺は、再び魅惑の布とご対面していた。
……今日は薄い緑色か。
昨日に引き続き、俺の体が止まる。
いや、流石に二日連続だし、耐性も少しはついたみたいだ。
見ただけでドキドキしているわけじゃあない。
いやいや、やり方もわかる。
なんとなくだけど、女性ものの下着は洗濯ネットに入れて洗濯するっていうのも知ってる。
問題は……下着に触れなければネットに入れることができないことだ。
夏織ちゃんの使用済みの下着を、この手で?
いいのだろうか?
昨日の一件で夏織ちゃんとは緊張せずに居られるようになったのに。
やはりこの布には、男を魅惑する
というか、だ。
俺のことを弟のように思ってくれてるとはいえ、男子に下着を触らせる夏織ちゃん。いいんだろうか?
注意した方がいいのかもしれないけど、言ったら俺が意識してるってのがバレる。それも恥ずかしいな。
今日も一人で悶々とする。「んぐう」とうめき声をあげてウロウロしていたら、時計が目に入る。
針は、もう学校に出発する時間を指していた。
がっつり二の轍を踏んでしまった。
ああまたか!
今日もパン一個加えて学校に直行ルートなのかよ!
焦った勢いで、夏織ちゃんの下着を……掴み、ネットに入れて洗濯槽の中へ。
洗濯機のスタートボタンを押し、学校の荷物を持ち戸締りをして、自転車に飛び乗った。
今日も朝練にギリギリ間に合うかどうかだ。くそう。
……でも、今日はお弁当は用意できたし、勝負は引き分けってところだな。うん。
道中の赤信号。
ほんの、ほんの一瞬だけ。下着をつかんだ手を鼻に近づけようかと思ったが、流石に気色悪いなと思ってやめた。
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