第1話 俺を試したのか? 前編
「孝太ー! 部活行こうぜー!」
太陽の高さも折り返して少し経ったころ、今日も最後の授業が終わると同時に同じクラスの
俺もこいつも、バスケ部に所属してる。俺は中学もバスケ部だったからその延長で高校もバスケを続けているけど、こいつは違う。
名前がシュートだからって言って、中学の時はサッカー部にいた。けど高校になって「バスケもシュートすんじゃん!」と気づいたらしい。なんて安直な奴。
「おう。行くかー」
学校の鞄と部活の用意が入った袋を持って、修斗と教室を出る。
「しかし、漢文ってさー。将来使うことあるんかな? 学校以外で見たことあるか?」
「んー。どうだろな」
修斗の他愛のない話を受け流しながら部室へ向かう。これもいつもの通りだ。
「あ、でも前見たわ! テレビで! クイズ番組でたまに見かけるよなー。やっぱ意味あるんだなー」
「将来タレントにでもなりたいんなら、そうなるな」
「……やっぱ意味ないな」
修斗と他愛のない話を続ける間に、俺は携帯をチェックする。これもいつものことなんだが、そこにはいつもと違うメッセージが届いていた。
「緊急事態発生 学校終わたらすぐに帰るてきて 母 」
母さんからのメッセージだ。いつもと違うというのは、不自然なスペースや変な日本語のことじゃない。これはいつも通りだ。
いつもと違うのは”緊急事態発生”という不穏なワード。
これまで十七年生きてきて、この言葉を使ったことないし、使われたこともない。
いささか不安な気持ちになる。
……家に空き巣でも入ったんだろうか?
……いや、まさか家族の身に何か起きたんじゃ?
一度不安になると、不安が不安を呼んでしまう。
「孝太、大丈夫か? 顔色悪いぞ」
「悪い、俺帰るわ」
「お、おう。わかったけどよ、大丈夫かよ?」
「ああ。先生と部長に適当に言っといてくれ!」
修斗にそう伝えると、引き返して下駄箱に駆け出す。
「急ぎすぎて事故んなよーー!」
遠くから聞こえる修斗の声に手だけで反応する。
俺は、学校を後にして、家へ自転車を飛ばした。
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