第一章 皇陵学園 三話「吉備津大会」
異端者クラスは一番奥にあるため、日当たりがよく、昼寝には最適だか、一番襲撃を受けやすい。この学校は生徒を大切にするということができないのだろうか。だがまあ異端者クラスの生徒ならばそこら辺の教師よりもよっぽど能力があるので問題はないが。
異端者クラスは極端に人数が少なく、俺を入れて五人しかいない。どいつもこいつも性格が異常な奴ばかりだが、特殊な能力を持つ奴や、才能がある奴が集まっている。この顔ぶれは卒業する以外に代わることはないだろう。
俺の席は廊下側の一番後ろだが、前に座っている
とりあえず、持ってきていたバックを
そうこうしていると、一時間目が始まった。坂口の
それから30分ほどたったころに全校収集がかかり、全校生徒が校庭に集まった。これからは自由行動で、参加したくない奴は各自自宅に帰っても大丈夫となっている。全く持って羨ましい限りだ。まあ、俺の場合自宅には最低限帰りたくないので、どこかで時間をつぶして帰ることになるわけだが。
しかしながら、ほとんどの生徒が校庭に残っている。何せ新一年生の実力が観れるのだ。ちなみにこの恒例行事には選出された二、三年生も出場している。俺たち異端者組の生徒は先ほど担任である××から手加減をするように注意された。
たまに大怪我をさせてしまうからだ。この事については強者が弱者を思いやるという点ではいいと思うが、俺たちにとっては本気も出せない幼稚園生とのお遊びなわけなので、不毛な時間を過ごしているようなものである。別に俺はほかのやつとは違って戦いに執着していたりするわけではないが、手加減をしながら戦いに参加するくらいなら、
それに、
これは学園での大会だからいいが、本当に妖怪退治をするときは遠くからの奇襲攻撃が向いていると思う。
まあ、遠距離攻撃が得意とはいえ、別に接近戦が苦手なわけではない。だがそれは人間を相手にした場合だ。妖怪の中には自我を持たない特殊なものもいる。そういうやつの行動は〝読めない〟ので嫌いだ。
なんにせよ、こういう大会では遠距離攻撃、とくに狙いを定めなければいけない武器は使いづらい。そのため近距離攻撃用の武器を使うしかないのだ。
さて、そうこうしているうちに、前の方で固まっていた集団が騒ぎ出した。どうやら始まったようだ。特に面白いものもないのでアイツを探しながら名前が呼ばれるのを待ってみる事にした……が、十分ほど歩いてみてもそれらしき影すら見つからない。何をしているのだか。
「こんなところでなにしてるの?」
聞きなれた声に後ろから呼び止められた。
「そっちこそ何してるんだ姉さん。出場する気はなかったんだろ」
双子の姉の逸華だ。確か前日出場しないといっていた気がするが、どういう心境の変化だろうか。
「別に、出場するわけじゃなくてもここにいる人はいっぱいいるでしょ。それにそこそこの実力者も結構出てるみたいだから、勉強のためにも残ってるの」
しばらく、逸華との他愛のない会話をしていると逸華が唐突に
「あれ? いま名前よばれたよ? 行かないでいいの?」
と言ってきたので、耳を澄ましてみると、生徒の
「生徒番号1134番! 『天野』対 生徒番号1135番! 『北条』! 場内に上がりなさい!」
そういうことか。面白いことをしてくれるじゃないか。乗ってやろう。ついでにどうやってクジの結果を操作したのかも教えてもらおうじゃないか。そこまで考えて、俺は四〇〇人ほどが見ている校庭の中心へと足を踏み出した。
この戦い、少しは楽しめるかもしれない。
そんな、気がした。
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