第5話 「金を借りる」


 「回すとは言ったものの、金がないんだよなー」


 俺はガチャの中を確認する。


 8000回以上回している筈なのに、容器部分から見えるカプセルの量は半分程度減ったぐらいだ。


 何らかの力で出てくる時に増えているのだろうか。

 魔雷とやらで壊してみるのもいいが、それで数個しか得られなかったら一生後悔ものだ。


 「……借りに行くか」





 「あの、500万借りたいんですけど」

 「……誰かに脅されてます?」

 「いや、じゃ、じゃあ100万で」

 「金を借りるということはどういうことか分かってるんですか? あなたの人生は長いんですから、諦めないでください」


 ダメだ。

 どこに行っても断られる。

 5回しか引けないし、本当はもっと借りたいが、これじゃあ借りれる気配が全くない。


 「つっても、俺に強盗とか大それたことできねーし……ん? あれは……」


 佐藤……金融?


 聞いたことの無い金融業者だ。

 最後にダメ元で行ってみるか。


 「……こんにちはー」

 「あぁ! どうぞ、此方におかけにってください」


 笑顔の良い男性だ。

 自分の経験上優しい人に違いない。

 また止められるのだろうな。


 「で、お金を借りたいんでしょ」

 「え、あ、はい」

 「幾ら?」

 「あの、どれくらいまで借りれるんですか?」

 「……5億」


 え?

 今何て言った?

 普通闇金でもあり得ないぞこんな金額。

 いかにも返せなさそうな見た目の俺に貸す訳ない。


 何か企んでるのか? 

 返せない時が怖いな……もし金を量産できる能力が手に入らなかったら……破産、か。


 「今直ぐ借りれるんですか? それ」

 「……まぁ、借りれるね」

 「じゃあ5億でお願いします」

 「……写真撮るから保険証を。その間にそこの書類に色々書き込んどいて」

 「は、はい」


 うぉーーー!!!

 その辺のことよく知らないけど、一瞬で5億も借りれるとかすげぇいい闇金だな!!


 俺は書類を渡すとその男は急に真顔になった。


 「……一応言っとくと、ウチは10日で1割トイチだから」

 「トイチ?」


 なんだそれは。

 金利の専門用語が何かか?


 ……まぁいいや。

 闇金だったら金利がヤバそうなのはどこでも一緒だろう。


 「じゃ、これ」


 銀色のアタッシュケースが五つ机の上に置かれる。

 ……重ッ!!


 「ありがとうございました!!」


 このアタッシュケースたちを家まで運ぶのは普通なら少々辛そうだ。

 だが、今の俺には魔術がある。


 「『人形操術』!! 五体に分かれてアタッシュケースを家まで運んでくれ」


 等身大程の木製人形が出てくる。


 これで安心だ。

 心置きなくガチャが回せるな。


 俺はそう、意気揚々と帰路についた。

 人形操術を見られているとも知らずに。


 

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