第12話
俺は、近所のファーストフードの店で白鷺と待ち合わせをした。白鷺は、真っ白いタンクトップ姿で現れた。目に毒というよりは、冷房の効いた店内では少し寒そうだった。案の定白鷺は震えて、カバンから上着を取り出すことになっていた。
「白鷺、あのラブレターはお前が書いたものなのか?」
俺の質問に、白鷺は首を振る。
「いいえ……あの手紙は、七菜が書いたものです」
白鷺は、そう答えた。
七菜という名前に、俺は首を傾げた。
「誰だ、それ?」
俺の言葉に、白鷺は驚いていた。話を聞くと、万引きしそうになったところを俺が止めたらしい。そう言われると覚えがあるが、あの女子生徒の名前までは知らなかった。
白鷺と知り合いだったらしい。
「知り合いのラブレターを語ったのか?」
白鷺は、そんな奴ではないと思いたい。
だが、白鷺はさっき自分がラブレターを書いてはいないと認めた。
「一番最初、私は……あなたのことを名前しか知りませんでした」
やはり、と俺は思った。
「私は、七菜に対抗したくて零の告白を受けて……」
俺は、どうすればいいのか分からなかった。
白鷺は話を続けているのに、話が頭に入ってこない。
だって、白鷺は――俺のことが好きではなかったのだ。
「白鷺、今まで悪かったな」
白鷺は、茫然とした顔をした。
「好きでもないのに、俺に突き合わせて」
「零!」
白鷺は、俺を呼んだ。
俺には、その声は聞こえていなかったけど。
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