スマホ…21世紀のドラッグ説について考察する。

ひさしぶりの更新ですが、今回はスマホに関するお題です。

以前のエッセイで、脳内快楽物質であるドーパミンに関して

書きましたが、今回はその続編ですね。


さて、今日の日本では、ひとり1台は必ず持っていると言えるスマホ。

これが21世紀最悪のドラッグであると言われているのを、

皆さんご存知でしょうか?


あまり知られていませんが、人間の脳は新しい情報を積極的に取り入れる、

情報に対して常に貪欲になるという進化を遂げているそうです。

長い狩猟時代、あちこち歩きまわって何処に多くの動物がいるか、

あるいは何処に沢山の木の実や果物があるか…

動物は移動しますし、木の実や果物は取ってしまえばなくなりますから、

これらの情報を常に最新のものにアップデートするタイプの

種族がより多く生き残り、進化した訳です。


今日では病気扱いされているADHD(多動性欠陥症候群)も、

実は環境の変化に敏感な事で、新しい事態に迅速に対応するという

進化のひとつであり、狩猟時代にはこういう特性があった方が

有利に働く事が多かったのですね。人間が長時間机に座って勉強したり、

仕事をしたりするというのは、ここ何百年の変化に過ぎず、

文明の変化にまだ脳が対応出来ていない訳です。

ひとつの事に集中しすぎるより、色々なものに興味がすぐ移る、

退屈を嫌うという要素は、狩猟生活にこそ必要なものでした。


さて、少し話がそれましたが、スマホを初めて世界に送り出した

アップルのスティーブ・ジョブズは、この人間の特性を非常に良く理解しており、

常に新しい情報を発信するデジタルデバイスとしてスマホを開発したと

言われています。スマホが鳴って新しいラインやメールが届くと、

人はそれをチェックせずにはいられない…。

そうしてそれがネットに接続される事で、人は24時間いつでもどこでも

新しい情報に触れる事が出来るようになります。

そして脳内快楽物質であるドーパミンは、怖ろしい事に、

この新しい情報を得るという事でも放出されるのです。


この状態が長く続くと、ドーパミンの作用によって、

人は知らず知らずの内にスマホ中毒になります。

スマホを見る度にドーパミンの放出が起こるからです。

もはやスマホを一時も手放せない。

ドラッグや酒の中毒症状となんら変わらないという訳ですね。


行動心理学の実験で、800人の被験者に数学の問題を解かせ、

スマホを持ったまま(但し試験中は電源を切ってポケットに入れておく)

の場合と、スマホをまったく持たない(そもそも試験会場にスマホを入れない)

場合とで、その成績を評価したところ、スマホを持たなかった場合の方が、

明らかに成績が良いという結果が出たそうです。


ただ単にスマホを持っているというだけで、人間の思考能力は劣化する…。

この実験は怖ろしい事実を明らかにしたと言えます。

スマホがあるというだけで、意識しなくても心の一部はうわの空に

なっている…。勉強や受験、集中力を要する作業や思考が必要な時は、

スマホを完全に手放し、電源を切って別室に置いておく、

人間はこうしないと駄目な生き物なのだと、この実験は示しているからです。


実際、スマホを開発したスティーブ・ジョブズは、

自分では普段スマホを持とうとせず、

自分の子供にはスマホを持たせなかったそうですから、

彼はこの事を良く知っていたのでしょう。


更に言うと、こうした集中力の低下以外に、

こうしたデジタルデバイスは、過度に脳を緊張、興奮させる作用がある為、

良質な睡眠を妨げ、眼を緊張させる事で視力の低下や眼圧を高める作用があり、

長時間の使用は精神にも悪影響を与えます。

欝の症状がある人がこうしたデジタルデバイスを

長時間使用するのは、厳に慎むべきなのです。

SNS等が原因で自殺にまで発展してしまうのは、

元々欝の要素がある所に、こうしたデジタルデバイスの

長時間使用が止めを刺す、という側面があるのですね。


なので医学的には、

①自分のスマホの利用時間を知り、長時間使用を避ける

(最近はそれを確認するアプリもあります)。

②画面をモノクロにする

(カラーの場合よりドーパミンの放出量が減るそうです)。

③メールやラインはチェックする時間を決め、その時間以外では行わない。

④集中が必要な思考や作業を行う時はスマホを持たない

(電源を切って別室に置く)。

⑤睡眠の2時間前からデジタルデバイスには触れない(電源を切って別室に置く)。

という事が推奨されるそうです。


日本人のほぼ全てが知らず知らず知らずの内に、

スマホやデジタルデバイスの中毒になっているというのは、

ある意味大変怖ろしい事です。

スマホも含めたこれらデジタルデバイスが普及したのは、

ここ何十年の話ですから、

長期的な影響がどうなるかはまだ良くわかっていません。

人間を含めた哺乳動物の進化には通常数万年の歳月が必要です。

今日の人間の脳は、約1万年前から殆ど変わっていないそうですから、

スマホやデジタルデバイスの世界は、人間の脳にとっては極めて異質、

はっきり言えば脳に良くないのです。


これらの事実をよく認識したう上でスマホを利用する。

私達が幸福に生きる為には、何事も節度や中庸の精神が

必要なのだと思います…。

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