刻み大根とチョコチップクッキー!

さて、今回も興味深い心理学のお話です。


とある大学で、面白い実験が行われました。

50人の学生を同じ教室でふたつに分け、Aの集団には刻み大根を食べて貰い、

Bの集団には焼き立ての美味しそうなチョコチップクッキーを食べて貰います。

Aの集団はBの集団が美味しそうなクッキーを食べているのを横目で見ながら、

あまり美味しいとは言えない刻み大根を食べるわけです。


さて、その後でそれぞれの集団に一筆書きの図形パズルを解いて貰います。

ちなみにこのパズルは初めから解けない様に出来ているのですが、

学生はそんな事は知りませんから、一生懸命解こうとする訳です。

その後それぞれの集団のパズルの解き方の状況を確認した所、

非常に興味深い結果が出ました。


Aの刻み大根を食べた集団は、図形パズルの問題を解くのに

平均8分挑み、平均19回試行錯誤しました。これに対し、

Bのチョコチップクッキーを食べた集団は、図形パズルの

問題を解くのに平均10分挑み、平均34回試行錯誤を繰り返したのです。


これが何を意味するかというと、意思の力で行う自己コントロールには、

一定の容量が存在するという事です。

Aの刻み大根を食べた集団は、Bの集団が美味しそうな

チョコチップクッキーを食べるのを横目で見ながら、それを食べるのを我慢した…

我慢する為に意思力を消費した結果、その次の図形パズルの問題においては

意思力の残高が不足し、Bの集団よりも問題を早く諦める結果になった…。

そういう事になるのですね。


余計な事に意思力を消費すると、人間は肝心な事を早く諦めてしまう…。

ダイエットや禁煙で余計な意思力を消費すると、仕事が出来なくなったり、

出社する前にその日の服装を気にし過ぎて意思力を消費すると、

同じ様に仕事に対する集中力が削がれる結果になる…。


この事を良く知っていたフェイスブックのマーク・ザッカーバーグや、

アップルのスティーブ・ジョブズは、毎日同じ服装をしていたそうです。

服装選びなんかで意思力を消費する気がなかったのですね。


これらの事象は、物事を効率よく進める為には、意思力を消費しない様に、

自分の意思に関係ない外部要因によって必要な行動を強制される方が、

何事も効率的である事を示唆しています。


ホリエモンは逮捕されて刑務所に居た結果、その環境によって

20㎏の減量に成功したそうですが、望むと望まないに関わらず、

その環境が自然に強制される外部環境を用意すると、

物事が効率よく達成出来る訳です。そういう環境では、

やろうかやるまいか、どうしようかと悩んで意思力を消費しませんから…。


受験勉強の場合、自宅でひとりで勉強するより、

お金を払って予備校に行った方が効果がある…。

これは過去からの統計でもはっきりしており、

これらの実験の結果を肯定していると言えます。


さて、お次は幸福と不幸の値段について。

行動科学の研究のひとつに、人間の感情の状況を

貨幣価値に換算するというものがあります。

ちなみに配偶者や恋人を死別で失った悲しみは、

3,800万円失ったのと同等で、

結婚は41万円の宝くじに当たった喜びと同等、

最初の子供の誕生は、同じく31万円の宝くじが当たったのと

同じ喜びなのだとか…。


これがどの様な計算式に基づいているのかは残念ながら

開示されていませんが、これらの行動科学の研究で

ひとつ判明した事は、人間の脳には、生まれつき持っている

幸福度を自然回復させる機能(レジリエンスというそうです)が

備わっているという事です。


この研究では、3,800万円を失ったのと同等の…恋人や配偶者を

死別で失った悲しみから、男性は平均で4年、女性は平均2年で、

元の幸福度に戻るそうです。

離婚とかの場合はもっと早く元通りの幸福に戻るのだとか…。


要するに一時的にとても悲しい事や辛い事があっても、

それは時間が経過する事によって自然に元の幸福度に戻る…

逆に宝くじに当たるなどして、一時的に非常に幸福度が上がったとしても、

時間が経過するとやはり元の幸福度に戻るらしいので、

どうも人間の脳というものは、悲しみも喜びも長続きしない様な

仕組みになっているらしいのです。


喜びが長くは続かないのは、経験的に誰しも感じる事だと思いますが、

大事なのは、悲しみや辛い事も一時的なものであるという事です。

辛い一時期さえ乗り越えれば、元通りの幸福感が戻って来るというのは、

何だかホッとする話ですもの…。


さて、このひそひそ話もめでたく50話目を迎えました。

よくもまあ、これだけ書けたなあと我ながら感心したりしていますが、

この世界は面白い事、不思議な事、興味深い話で満ち溢れています。

好奇心さえあれば、きっと決して退屈しない世界なのだと私は思います。

そしてこの好奇心こそ、人生を幸せにしてくれる強力な魔法なのでは

ないでしょうか?


ですので、これからも徒然なるままに、

気ままにひそひそ話を書いていきたいと思います…。

皆様引続きお付き合いの程、何卒宜しくお願い申し上げます!!

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