ドーパミンの達人。

有名な脳内快楽物質ドーパミンを皆さんご存知でしょうか?

今日はそのドーパミンについて考えてみたいと思います。


ドーパミンは脳内で生成される化学物質です。

ドーパミンは脳内にある生成部位を電気的に刺激すると、

人工的に発生させる事も可能です。ラットを使った実験では、

ラットの脳のドーパミン生成部位に電極を取り付け、

ラットが目の前にあるスイッチを押すと、その電極に電流が流れ、

ドーパミンを生成させる…が行われています。


この場合、ラットは生物の3大欲求、睡眠欲/食欲/性欲を完全に無視し、

1時間あたり4,000回もの回数でスイッチを連打し、

最後には過労で死んでしまうそうです。

同様の実験をうつ病患者の青年で試したケースもありますが、

この場合も青年は1時間に2,000回もの回数でスイッチを連打したそうです。

人間の精神力でも抗えない、強力な作用があるのですね…。


快楽物質ドーパミンは、人間が楽しいとか嬉しいとか感じた時に

脳内で生成されます。

生物の基本的欲求、食欲/性欲を満たした時にも生成されますし、

それ以外、趣味やギャンブルに興じている時にも生成されます。

お酒とかドラッグの様な薬を飲んだ時にも生成される…

ギャンブル依存症や薬物依存症にはドーパミンが大きく関わっている訳です。


こう書くとなんだか良くない物質の様に思えるかもしれませんが、

このドーパミン、実は人間の精神や文明の発展の為には

なくてはならない物質なのです。


人間と動物の大きな違いのひとつは、人間が長期的な目標を作る所にあります。

例えば目の前に食べ物があれば、普通の動物はすぐ食べてしまいますが

(食料を備蓄する動物もいるにはいますが少数です)、

人間の場合は食料の備蓄状況を確認し、備蓄が少ないと判断すれば、

それを備蓄に回します。目先の欲より将来の困難に打ち勝つ事を優先する訳です。


苦しい受験勉強に耐えて、長期間勉強を継続するのも、自分の将来を考えて、

目先の快楽を制御している訳です。スポーツで成果を出したり、

難しい技術を開発したりするのも、同様に成果を出すのに長い修練が必要なので、

目先の快楽を制御しなくてはなりません。

そしてその結果、目標を達成すると、その時には脳内から大量の

ドーパミンが溢れ出し、

人は非常に大きな達成感や幸福感に包まれる事になります。

将来の為に今を犠牲にして努力するという事にも、

ドーパミンは大きく関わっているのですね。

人間のやる気を制御する物質でもある訳です。


使い方を間違えると快楽依存症になってしまいますが、正しく使えば、

人間の進歩に大いに役立つ…なので、私達はこのドーパミン制御の

達人になる事が大事な訳です。


何らかの努力に対して、その御褒美としてドーパミンを脳に与えるというのが、

本来の正しい使い方。マラソンやウォーキングを三日坊主にしない方法は、

毎日続けて脳に達成感を与える事…定期的にドーパミンで脳を

刺激する事だそうです。達成感を感じ、ドーパミンが毎日特定の時間に

脳内に放出される様になると、 次第に人間はそれをやる事が楽しくなる…

毎日定期の時間帯にドーパミンの放出を脳が要求する…

要するに、脳を成果の上がる正しい行為の依存症にするという事です。


一方でゲームやギャンブル、薬物等、人に肯定的な影響を与えないもので

ドーパミンを放出させてばかりいると、これに対しても同じ様に

依存症になってしまいます。

娯楽が非常に多い今日、私達はドーパミンの放出を高い精度で

コントロールしなくてはならないのですね…。


この様に、達成感に対しても放出されるドーパミンですが、

実は集中力にも非常に関係しているそうです。

これはハーバードビジネススクールで行われた実験ですが、

ある仕事を3つのグループに分けて行いました。

グループ①は、難しい仕事から順番に仕事をする。

グループ②は、難易度は考慮せずに適当に仕事の順番付けを行い、

その順番通りに仕事をする。

グループ③は、仕事を簡単な物から順位付け、その順番で仕事をする。


実験の結果、この中で一番仕事の効率が高かったのは、グループ③でした。

簡単な仕事であっても達成感が生じれば、ドーパミンが脳内に放出され、

それによって脳が幸福感に包まれ、集中力も同時に高めたのです。

これは仕事や受験勉強等をやる時に役立ちそうです。


尚、達成感を感じる事で放出されるドーパミンの量は、

期待値と実際の成果の差が大きい程、多くなる事が分かっています。

仕事で1,000万しか稼げないと思ったのに、実際には2,000万円稼げたとか、

偏差値50の大学にしか合格できそうもないと思っていたのに、

偏差値60の大学に合格したとか…

期待値に対し、実際の成果が高ければ高い程ドーパミンの放出量は多くなります。


逆に期待値と実際の成果が同じか低いと、

達成したとしてもドーパミンの放出量は小さくなります。

なので何事も目標の設定というものが、非常に大事になるという事なのですね。

仕事をする時は簡単なものから始めて達成感による幸福感と

集中力を高め、そうして最終的な仕事量は達成可能な水準よりも

少し高めに設定すると、更に達成感や幸福感が高まり、

やる気アップと集中力向上に役立ちそうです。


尚、ドーパミンは褒められたり、称賛された時にも放出されるので、

人を褒めたり称賛したりするという行為は、人間関係を円滑にする上で、

非常に効果を発揮するものだと言えます。


この世は理不尽で辛い事が多いですから、人はついつい

良くない行為でドーパミンを使ってしまい、

それで脳を依存症にしてしまうのですが、

こういう仕組みを知った上で上手く応用すれば、

世知辛い世の中をもう少しうまく渡っていけるかもしれません。

私も頑張って、ドーパミンコントロールの達人になってみたいなぁ~

なんて思うのでした…。

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