嘘みたいなホントの話…シーランド公国。

今日は嘘みたいなホントの話…シーランド公国建国とその歴史のお話です。

尚、2020年、今日の時点でこの国を独立国として承認している

国家は存在しません。でも架空ではなくて、現実に存在しているのも事実です。

それを前提に読んで頂ければ嬉しいですね。


シーランド公国は、名前からして島の様に思えますが、実は島ではありません。

イギリス海軍が第二次世界大戦中に、ナチスドイツに対抗する為に作った、

マンセル型と呼ばれる小型海上要塞がその原型です。

なのでその国土面積は僅か207平方メートル、100坪にも全然届きません。

おそらく世界最小の自称独立国です。

外観は2本の大きな柱の上に居住区や砲台が設けられたヘリポートの様な建築物で、

第2次大戦中、ここに150~300人くらいの海軍兵が駐屯していました。

どんな形をしているかは、ググるとすぐ写真が出て来ますので、

確認してみて下さい。イギリス南東から海上に10km程度離れた所に

存在しています。位置的にはロンドンから南東へ50~60kmと

いった感じでしょうか?


このマンセル型海上要塞は、

戦争が終わると全く使われなくなり、20年以上も放置されます。

なにしろナチス・ドイツ軍向けの防御施設ですから、

敵がいなくなってしまえば無用の長物ですよね。

かといって再利用する様な手だてもないし、

処分する費用ももったいない。

イギリスは第2次世界大戦で大きく疲弊し、

戦後は復興の為の福祉政策や事業の国有化などで

多額の費用を必要としていました。

なので、役に立たない海上の巨大なゴミを

処分する余裕はなかったみたいです。

そこに目をつけたのが、元イギリス陸軍少佐の

パディ・ロイ・ベーツという人でした。


彼…ベーツは陸軍除隊後、漁師として生計を立てていました。

1965年、彼は元々多数あったマンセル要塞のひとつで海賊放送が

行われている事を知ります。

すると何を思ったか、ベーツはその施設に侵入して彼らを追い出し、

自分がそこで海賊放送を始めました。

しかしベーツは、その後イギリス政府に放送法違反で訴えられ、

100ポンドの罰金の支払い命令を受けてしまいます。

更に程なくして資金不足にもなり、海賊放送を中断せざるを得なくなりました。

どうしてそこまでして海賊放送を続けたかったのか、その理由はわかりません。

いったい何を放送していたんでしょうね?

是非その内容を聴いてみたかったと私は思います。

そうこうしている内に、ベーツはイギリス領海の外にある

別のマンセル要塞に移動しました。

けれど相変わらず資金問題は解決されないし、追い打ちをかける様に

イギリス政府が1967年に成立させた海洋放送法で、

「マンセル要塞からのラジオ放送禁止」を定めた事から、

結局ベーツは海賊放送が出来なくなってしまいます。


この法律に怒り狂ったベーツはとうとう驚くべき行動に出ました。

1967年9月2日、自らを「ロイ・ベーツ公」と名乗り、

占領したマンセル要塞のひとつでイギリスからの独立を宣言したのです。

これが現在のシーランド公国になります。

これを知って接近して来た英国海軍船を、彼は領海侵犯容疑で警告射撃し、

逮捕されます。釈放後の1968年、別の海賊放送がシーランド公国を

占拠しようとした時は、ベーツは火炎瓶と拳銃で応戦しました。

このベーツの物騒な行動をを聞きつけたイギリス海軍がまたもやってきます。

するとベーツの息子であるマイケル・ベーツが、

「シーランド公国への領海侵犯」としてイギリス海軍へ警告射撃、今回は

親子共々逮捕されます。この親にしてこの息子ありという感じでしょうか?


この射撃事件は、その後裁判沙汰になるのですが、

この裁判でイギリス政府側の訴えは、

「シーランド公国の場所がイギリスの領海外である事」

&「今までイギリスは領有権を主張していなかった事」を理由に

棄却され、結果これはイギリス司法の管轄外で起きた騒動だとして、

ベーツ親子は釈放されます。

別の国との騒ぎであれば国際問題になったのでしょうけれど、

シーランド公国はそもそも国として認められていないので、

こういう判決が出たようですね。


これに対し、ベーツは「イギリス政府がシーランドの主権を認めた!」と主張。

1975年には憲法や国旗・国歌を制定して、

独立国家としての体裁を整えていきます。

けれど、資金問題は相変わらず。お金がありません。そうりゃあそうですよね…。

その後ベーツはこの資金問題を解決する為にある計画を思い付きます。

それはシーランド公国にカジノを設置する事です。

こんな海上にポツンと浮かんだヘリポートみたいな所で

カジノが出来るかどうかなんて、甚だ疑問ですが、ベーツは大真面目でした。


カジノ設置の為の資金繰りをするため、ベーツは1978年、

当時西ドイツで富豪だったアレクサンダー・アッヘンバッハを

シーランド公国の首相に任命します。

彼の財産の後ろ盾でカジノを作ろうと思った様ですね。

ところが何を思ったのか、このアレクサンダー・アッヘンバッハが

クーデターを起こし、シーランド公国を乗っ取ってしまいます。

ロイ・ベーツ公の息子であるマイケル・ベーツ公太子を

人質に取ってシーランド公国に立てこもったそうなので、本気ですね…。

いや、ここは笑うとこなのでしょうか…。


しかし、イギリスに入国したロイ・ベーツ公は、そこで20名の義勇兵を募り、

ヘリコプターでシーランド公国を急襲して、見事公太子とシーランド公国の

奪還を果たします。さすが元イギリス陸軍少佐のロイ・ベーツ公…って、

良く20人も義勇兵が集まりましたね…。

どうやって集めたのでしょう?


さて、こうしてシーランド公国を追われたアレクサンダー・アッヘンバッハは、

その後西ドイツで【シーランド公国亡命政府】を樹立。

この【シーランド公国亡命政府】は少なくとも2017年までは存在していた様

なのですが、ここも笑うところなのでしょうか?


この後日談として、シーランド公国は西ドイツにいる

アッヘンバッハらに公式に罰金の支払いを命じたのですが、

この交渉の矢面に立たされた西ドイツ政府は困惑します。

イギリス政府に仲裁を依頼するも断られ、

西ドイツは渋渋ですが、シーランド公国に外交官を派遣することになります。

ロイ・ベーツ公は西ドイツが外交官を送ってきたことを、

自国の独立が認められたものと勘違いして狂喜乱舞。

罰金の支払いの事は忘却の彼方へと消えたそうです…。


その後のシーランド公国ですが、2006年に老朽化した発電機から火災が発生。

シーランド公国の設備は半世紀も前の骨董品ですから、

危険は以前から指摘されていた様ですが、公共投資をケチったみたいですね。

火災鎮火から1ヶ月ほどで発電機及び配線は復旧されたのですが、

国土全土を襲った未曾有の災害の復興には、

ケチった公共投資を大幅に上回る予算が使われたそうです。


2007年にはシーランド公国自体がなぜかオークションにかけられ、

入札したスウェーデンの会社にあわや落札されそうになりますが、

結局うやむやに…。


2012年、建国の父であるロイ・ベーツ公は、

イギリスの病院で91歳の大往生を遂げます。

ここまで執着したのですから、

最後はシーランド公国で迎えたかったでしょうに…。

そしてその時摂政として国務を代行していた公太子、

マイケル・ベーツ公太子が2代目の大公として即位します。

同時にこの時シーランド公国の人口が4人から3人へと25%も減少し、

公国の将来に暗い影が差す事となりました。


2020年の今日、シーランド公国は尚存在しています。

イギリス政府はシーランド公国などないかの様にふるまっているそうです。

面倒事に巻き込まれたくないのでしょうね。


ちなみにシーランド公国の主要産業は【爵位】の販売。

公式HPも開設されており、このHPは驚くべき事に日本語にも対応しています。

なので日本からでもHPから爵位を気軽に購入出来ます。侯爵とか、伯爵とか…。

で、爵位等を購入すると、権利書と一緒にシーランド公国の歴史が

綴られた冊子、大公一家の写真、ついでに公式キャラクターの

シーランド君が印刷されたチラシが送られてくるそうです。


シーランド公国は独自の通貨(シーランド・ドル)・切手を発行しており、

主に世界各国の硬貨・切手愛好家や、その方面の好事家の間で取引されています。

以前は独自のパスポートも発行していた様ですが、ドイツにあるシーランド公国亡命政府も偽造パスポートを発行し始めたため、現在は販売中止みたいですね。。


さて、ここまで読んで皆さん如何だったでしょうか?

私の感想は、【夢見るって素敵だなぁ~】ってとこですかね?

みんな大真面目にやっている所が面白いと思います。

ここまで徹底したら、何だか楽しそう。


日本の東京湾にも旧日本海軍が作った海上要塞の名残があるので、

誰か建国してみないですかね?

その時は私も義勇兵として参加を検討してみたいと思います…♡。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る