ナンバー2について想う。
世の中には沢山の企業が存在していますが、多くは物凄く偉い人が
ひとりいて、その人を頂点に組織されているのが普通です。
頂点を構成するのが取締役会という組織である会社は多いのですが、
実際はその取締役会も形骸化している事が多く、多くは会長とか、
社長の鶴の一声で重要な事が全て決定されます。
結局の所、人事権を掌握している人が一番偉くなるのですね。
愚か者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶというのは、
かの有名なオットー・フォン・ビスマルク閣下の言葉ですが、
このナンバーワンがひとりという組織は、歴史から見ても、そのトップの
器の大きさによって、最終的にどこまで成功するかが決まる様に思います。
私が好きなのは、本田技研工業を創業した本田宗一郎さんと、
ナンバー2であった藤沢武夫さんのコンビです。
本田宗一郎さんは浜松の発明狂と言われた、
技術開発に関しては鬼の様な厳しさと才能と夢を持った人でしたが、
少年の様な心を持っていると同時に、実際に少年みたいな性格でもあって、
客観的に見て、会社経営者に向いている様な人ではありません。
この人の一番偉い所は、自分のそういう所を自覚した上で、
足りない所を、ナンバー2である藤沢武夫さんに文字通り任せた事にあります。
多額の先行投資が必要なバイク/自動車メーカーの技術開発と
営業/財務というのは、相反する要素が多々ありますから、
この人2人は度々取っ組み合いの大ゲンカをしたそうです。
しかし、結局最後まで二人三脚で歩み続け、1973年に一緒に退任します。
まるで、「俺が辞めるんだから、てめーも辞めろ!」と、どつき漫才でも
しているかの様ですが、でも、本田技研が大きくなったのは、
自分に面と向かって刃向かってくるナンバー2を許容出来た、
本田宗一郎さんの度量の大きさにあるのだと思います。
戦前から巨大なメーカーであったトヨタや日産、富士重工などの大手と
渡り合い、戦後小さな町工場から出発して世界の本田技研になったのは、
なによりその器の大きさを示していると言えるでしょう。
天下を統一した豊臣秀吉にも、統一までの過程には同じようなナンバー2、
弟である小一郎秀長が居ました。この人と蜂須賀正勝という家来は、
秀吉の天下統一までの過程で実質のナンバー2として活躍しており、
この2人がいる間の秀吉は、作家の故司馬遼太郎さんをして、
「この時期の秀吉であれば是非仕えてみたい」と言わしめた程です。
蜂須賀さんは秀吉より年長で、武士道を心得た厳しい人物であったらしく、
今の時代だったら、【ハーレー・ダビットソン】の様なバイクに乗ってそうな、
ダンディーで渋いおじさんだった様です。女にだらしがなく、
すぐに脱線する秀吉を強くたしなめる存在として君臨していたみたいですね。
また実際秀吉も、尾張の小者時代から一緒だったこの2人に対してだけは、
面と向かって罵詈雑言を浴びせかけられても、決して懲罰しなかったそうです…。
秀吉もそれだけの度量の持ち主であったと言う事なのでしょう。
残念な事にこの2人は秀吉よりも早くこの世を去ってしまい、
この2人が居なくなってから、急に豊臣政権はしまりがなくなり、
言っては悪いですが、幼稚化します。
ナンバー2を失った秀吉は、ひとりでは立ち行かなくなってしまったのです…。
考えてみれば、常に自分の傍に居て、遠慮なく気軽に罵詈雑言をぶつけてくれる
友人程得難いものはありません。私は本田宗一郎さんを本当に羨ましく思います。
だって彼は、最後の最後まで、マブダチと会社を経営していたのですから。
てめーこの野郎、お前が死ぬなら俺も死ぬ!
こんなマブダチと会社を経営を出来た人生なんて、
とっても最高に幸せだと思うのですよ。
皆さんは如何思われるでしょうか?
今日、存在している経営者の多くにはそういうパートナーはいない気がします。
先日ある企業の社長さんの講演を聞く機会があったのですが、
その社長さん、遠目に見てもわかるくらい鼻毛が伸びているのですね。
ああ、この方には、【お前、みっともないから鼻毛くらい切れよ…】と、
忠告してくれる友人がいないのだなぁ~と、そっちに感心した次第です。
いくら担ぎ上げられた所で、それが一体何だと言うのでしょうか?
人の一生は棺を蓋うまでわからない…。
あなたの事をを本当に愛し、共に戦ってくれた戦友程素晴らしい
存在はありません。経済的成功より、そっちの価値の方が、
ずっと重いと私は想うのです…。
そうして、私もそんな人生を歩みたいと思うのです…。
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