ヒットはどうすれば打てるのか?

プロ野球の打者がどの様にしてボールを打つのか?

これを映像科学的に分析すると、非常に面白い事がわかるそうです。

みなさんは、プロの打者が打撃動作を始める時、

投手の手からボールが離れてから足を踏み出し、打撃動作に入るのか?

それとも投手の手からボールが離れる前に足を踏み出し、打撃動作にはいるのか?

どちらだと思いますか?

プロ野球の投手と打者の動きを専門的な映像分析装置にかけて

確認するとその結果が分かるのですが、結論から先に言うと、

99%の打者は、投手の手からボールが離れる前に足を踏み出し、

打撃動作に入るそうです。


これが何を意味するかと言うと、

プロ野球の打者の殆どは、投手の球種やコースを事前に予測し、

それを前提として打撃動作をしているという事です。

来たボールに対応しているというより、事前に来るボールの

球種やコースを予測して打撃を行う。

当然ですが、予測がはずれれば、そのボールは見逃すか、

カットするかして、難を逃れる…。

失敗して空振りするとか、凡打する事も当然あるでしょう。

ストライクとボールを見極めるだけではなく、

かなり高度な予測が出来ないと、プロの打者としては通用しないという事です。

(阪神の打者だった横田選手は著作の中で、鹿児島実業の高校時代は、基本、

常時ストレートを待っていて、変化球が来たらそれに対応するという形で

バッティングが出来たが、プロは投手の変化球のキレが高校生とは比較にならず、

ストレートか変化球かを読む必要に迫られたと書かれていますね)。


単純に投手の投げるボールの50%を正確に予測出来たとして、

予測が当たった場合、50%の確率でヒットして(当然打ち損じも

あるでしょうから)、ようやく打率2割5分という事になります。

ボールをバットに当てる技術の他に、相当クレバーな頭脳が必要です。

予測の確率が高まれば、当然ヒット数は増えますので、

打撃技術が同等であるとするなら、頭が良い人の方が打率は上がります。

今の時代の野球で、3割以上の打率を出す打者は、相当頭も良く、

勉強家であるとみなすべきでしょう。


通算本塁打数657本、通算安打数2,901本、いずれも日本プロ野球記録

史上第2位、故野村克也さんは本人が認めている通り、

徹底的な読み打ちバッターで、 投手の癖やキャッチャーのリードの癖を、

極めて緻密に研究していた事で知られています。

ちなみに今回書いたこの打撃解析のデータを取った打者の中で、

例外は2人しかいなかったそうです。

ひとりは松井秀喜、もうひとりはイチローです。

この2人だけは投手の手からボールが離れてから打撃動作を

開始しており、この両名に限っては、予測がはずれても来たボールに

対応出来た事が伺えます。他の打者よりボールを長くじっくり見て、

引き付ける事が出来たのですね。天才はどこの世界にも存在します…。


野球の打撃と同じように、新しい会社を興し、ヒット製品を送り出す

というのは、かなり難度の高い予測作業であると言えます。

お客さんがその製品やサービスどういう評価をするか?とか、

競合のサービスや製品のレベルがどうなのか?とか、

開発スピードや予算は?とか…。

起業の判断をするには、様々な情報が必要なわけですが、

市場競争に伴うスケジュールが非常に厳しい為に、

情報が不足している段階で決定しなければいけないケースが大半です。

融資先を十分に相手を説得できるだけの材料は中々無く、

多分に企業家本人が主観による判断をしなければならないわけですね。


しかし実際には起業家本人の主観が間違えていることもあるし、

市場から予想を超えた反応が返ってくることもあるし、

そういう意味でかなり困難な予測や推測を行う事になります。

なぜなら、世の中には失敗した理由の分析が出来る人は多くいますが、

成功している理由に関して、上手く分析が出来る人はめったにいないからです。

たとえば、「新聞を読む人が減ったよね」という失敗に対して、

「値段が高い」とか、「紙が邪魔」とか「読む暇がない」とか、

「新聞はネットより情報が古い」とか、新聞を買わない理由を

いろいろと挙げるのは、沢山の人が出来ますね。

「AKB48が衰退した理由」でも、「メンバーの入れ替わりが早すぎた」とか、

「競合グループが増えすぎた」とか「メンバーが可愛くない」とか言える訳です。


では、逆に、「何故、Googleは成功したのか?」というと、

理由をあげるのは難しかったりします。

成功している理由は、「画面がシンプル」とか、「レスポンスが早い」とか、「SPAMが少ない」とか、ちょこちょこありますが、決定的に成功した

理由をあげるのは、結構難しいと思います。

初期の成功に関しては、ページランクが云々とかありますが、

現在Googleが成功し続けている理由というのは、明確な何かがあるわけでは

無かったりします。 「知財部が強い」とか「ライバル買収しちゃうから」とか、

小さな要因は数多くありますが、大きな理由が一つあるという訳ではないのではないでしょうか?


結論から言うと、起業って、ある程度の予測は可能だけれど、実際にやってみないとわからないという事です。何故なら、あらゆる状況の想定と、それに関する全ての情報を得られる組織など、本質的に存在しないからです。

新しい事業を始めるのに、リスクゼロという訳には、中々行きません。

そう。野球の打撃と同じく、かなり高度な予測を立てた上でも

成功の確率は2割5分。3割以上の数字を出せば相当優秀な部類でしょう。

逆に言えば7割以上は失敗と言う事です。そしてそれをいちいちほじくりだして、

責めたり、蔑んだりする様な体質になっていたら、

誰もチャレンジャーにはならなくなる。失敗を通して得られる経験、

技能、知識も無駄になってしまう。ヒットはどうすれば打てるのか?

それは緻密な予測と、思い切ってバットを振る事ではないでしょうか?

偉大な発明家であったエジソンは、こう述べています。

「私は失敗など一度もした事はない。うまく行かない10,000通りのやり方を

発見しただけだ…」


故に失敗は多くても、新しい可能性を見出して、それに積極的に動ける人材を

大事にする。それが事業の新陳代謝を促し、常に新しい事態に対応出来る力の

維持に繋がる。本当の大打者になろうと思うのなら、

相手のエースの決め球を打つことだ…。落合博満さんの言葉ですが、

これがチャレンジでなくて何なのでしょう?


あなたの周りに事後評論ばかりしている人はいませんか?

いつの間にか、あたなもそうなっていませんか?

そうはならない様に、常に優秀なチャレンジャーでありたいものです。

かつて、大国ペルシアの大軍と戦う事になったスパルタ軍の少年が、

出撃前に、剣が短いと母親に嘆いた所、母親は急に厳しい顔になり、

『一歩踏み込め!』とたしなめたという、有名な逸話があります。

そのスパルタは、見事ペルシアを駆逐します。

スパルタは現在のギリシアの一部ですが、

今日のギリシアはその伝説にはまったくそぐわない、

『チャレンジャー』のいない国なのかも知れません。

日本は決してそんな国にはなって欲しくない。

新しい首相が誕生しようとしている、そんな時に私は思うのでした…。

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