クルト・マイヤー著【擲弾兵】を読んで…。

今回はクルト・マイヤー著『擲弾兵』の読後感想です。

クルト・マイヤー ドイツSS12師団司令官(少将)の自伝ですね。

第2次大戦初期から末期まで、常に部下の先頭に立つ事、公明正大である事、

エネルギッシュで聡明であり、勇敢な事から敵味方双方から尊敬を込めて、

『パンツァー(戦車)・マイヤー』と呼ばれた人物ですね。

SS12師団の勇戦に関しては、実際に対戦したカナダ軍やイギリス軍が公式記録で、

『1944年のカーン戦線(フランス)において、ドイツSS12師団の示した

不撓不屈の戦闘精神は、我々全戦闘員の賞賛に値する』

と記載している事からも明らかです。

その人生は戦争時代から彼の生涯が終わるその時まで、

これ以上はないかと思える程、苦しみに溢れています。

しかし彼はどのような事態にも屈せず、砲弾が尽き、そのエンジンが

焼き切れるまで前に進む、不撓不屈の生きたパンツァーその物でした。


1944年6月以降、何十倍もの連合軍の攻撃を1カ月近くに渡って支え続けた

ドイツSS12師団は、ついに包囲され、指揮官のマイヤー自身も捕虜になり、

身に覚えのない理不尽な理由から、死刑判決を受けます。

しかしかつての敵であるカナダ軍人会は、マイヤーの死刑執行承諾書に対する

署名を拒否(真の敵こそ真の理解者だった)。

結果マイヤーは無期懲役に減刑され、最終的に捕虜となってから9年後に

釈放されます。


釈放後はアンドレアスという地ビール会社で、セールスマンとして老骨に鞭打って家族の生活を支え、その一方でかつての大戦での残虐行為を全て

武装SSのせいにして差別するドイツ国内法を改正させるべく

(SS軍人にのみ、軍人年金が支給されず、

かつての部下の多くが苦しい生活を強いられていた)果然と戦い、

その勝利が目前となった1961年12月23日、 51歳の誕生日に心臓麻痺で死去。

12月28日に行われた葬儀には墓地に4千人以上のかつての部下が参列。

彼らは悲しみのあまり、溢れる涙をぬぐう事を忘れていたと言います。


もし私がこの本の紹介文を書くとしたら、多分、下記の内容となるでしょう。


どんな人生にも危機や困難は必ず訪れる。

これらを突破する為に、諸君は時にパンツァー(戦車)にならなくてはならない。

そうだ、分厚い装甲を打ち砕き、襲い掛かる敵をなぎ倒し、前路に立ち塞がる

あらゆる障害物を蹂躙して、遮二無二前進するあのパンツァーに。


この本を真に読破された諸君の心の中には、

必ず一人のクルト・マイヤーが住んでいる。

困難な時には諸君の内なるクルトに相談してみたまえ。

彼は危機に陥った部下を必ず救い、10倍の敵を押し返し、

絶望的な死の恐怖や孤独にも打ち勝った男だ。

必ず合理的で的確なアドバイスを与えてくれるだろう。


やがて諸君の耳に戦車のキャタピラの音が聞こえてくる。

砲が唸り、急降下爆撃機の金属音が鳴り響く。

その時、諸君の前に、クルト・マイヤーが立っている。

『戦友諸君!時は来た。生き残る為には迅速な突破が必要である!』


『マイン パンツァー フォー!(我が戦車よ、前へ!)』


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