第15詩 うそ

僅かに見えた あの小さな影

通り過ぎるには 惜しくて

戻る 戻る たった一行

でも それだけの言葉を削る

窓の外 呼吸の白い湯気が

ふわりと揺れた


春風吹かす 冬の残り香

夏の中にある 秋の気配

時折振り返り 笑いかけたら

きっと きみは笑ってくれるかな


鉛筆が滲んで 消ゴムじゃ消せない記憶

何度手繰り寄せて 届かなくて

泣きじゃくった あの日

もう一枚 紙を用意しよう

何も書かれていないもの


それでもきっと きっとわたしは

きみの影を 探してしまうのだろう

忘れたよ なんて 嘘もいいところで

誰もいない 部屋の隅で泣いた

自分を操る術を探したくて

自分を偽る方法を知りたくて

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