第21話 カイサの職業

「ただいま帰りました!」



受付のハイダさんに笑顔で帰還報告をする。私のことを見るやいなや満面の笑みで駆け寄ってきた。



「おかえりミズキくん。おっ、後ろの女の子は?」



カイサに気がついたハイダさんは興味本位なのか、覗き込むようにカイサのことを見つめる。



「新しい仲間のカイサです。」



カイサのことを手で示し、ハイダさんに紹介する。すると、カイサはビシッと姿勢を正して深くお辞儀をした。



「私は本日よりミズキの仲間に入れて頂きましたカイサと申します。この度は依頼を受けていただきありがとうございました。お陰様で国は滅ぶ事はありませんでした。」


「ううん。お礼ならミズキくんにね。私は依頼を紹介しただけだから。それよりも……私はハイダ。ここの受付をやっています。よろしくね。」



サッとカイサに手を差し出すハイダさん。それに対してカイサはよろしくお願いします、という言葉と共に握手を交わした。



「それじゃ、ギルドカードを作らないとね。いやー、それにしてもミズキくんの周りには美人さんが集まるねー。」


「私もそう思います。」



二人を見つめながら笑顔で答えると当の二人は顔を真っ赤にして私を見ながら目を見開いていた。



「あらあら二人とも照れちゃって……」



茶化すようにハイダさんは手元で手続きの紙を作成していく。



「それじゃ、これに必要事項を記入して持ってきてね。よろしく!」



私がギルドカードを作った時と同様に専用の机に移動して記入を始めるカイサ。


性別、年齢、名前。次々と考えることなく記入を進めていく。年齢は……十四歳!?



「カイサって十四歳だったの!?」



私と全く同じ感想を抱いた様子のエルナが驚愕の声を上げる。



「は、はい。」


「同い年ぐらいかと思ってたよ……」


「確かにカイサって大人っぽいよね。」



見た目はもちろん、冷静でクールなところなど到底十四歳には見えない。現実世界だと中学二年生と言ったところか……それで軍団長だったんだからやっぱり天才か。



「そんなことありません。よく両親からはまだまだ子供だと言われることが多かったので。」


「あ、そういえばご両親に旅に出る報告はしなくて良かったの?」


「ええ。両親とは四年ほど会っていませんから。問題ないです。」


「そうだったんだね。って、まだまだ子供って言われてた時って十歳だよね……そりゃ子供だよ。」



そんな会話をしている間に書類の記入が終わったようでペンを返却してカイサは立ち上がっていた。


書類をハイダさんに提出すると書き漏れがないか、目視でざっとハイダが確認を行う。



「うんうん。得意武器は刀で……職業は魔法剣士ね。」



確認の為に重要項目を読み上げて確認していくととんでもないワードを耳にする。魔法剣士って……



「「魔法剣士!?」」



咄嗟にでた言葉がエルナとハモる。それほど衝撃な言葉だった。私はてっきりカイサは純粋な剣士だと思っていたのに。



「言ってませんでしたか。」


「聞いてないよー!」



相当驚いているようなエルナ。そうか、エルナも魔法が使える戦士みたいなものだっけ。これが職業被りと言う奴か。



「そういえばエルナの職業はなんですか?ミズキは剣士ですよね。」


「うん。私は剣士のはずだよ。エルナは……」



チラッとエルナの方を見る。



「私は一応戦士やってるよ。でもあんまり戦闘向きのスキル持ってないかなって個人的には思ってるけど……」


「そうなんですね。でも一瞬見ただけでしたけれど、エルナが持っていた薬草はどれも上等な物ばかりでした。私はてっきり僧侶の資格でも持っている方かと……」


「ああ、それはね……私、食材鑑定のスキルを持ってるんだ。このスキルは薬草とか、ポーションとかにも適用されるからどの味でどのレベルの代物なのかすぐに判断できるんだ。」



見ただけでそこまで判別できるなんて以前教えてもらったエルナ自身が持っているスキルとは性能が上がっているように感じた。


それともスキルはゲームのように連続使用で能力が上がっていくものなのだろうか。



「エルナのスキルって低ランクって言ってたような気がするけど……」


「うん。なんか最近だけど、食材を注目しながら歩いているうちに能力値が上がったみたいで、目視しただけで食材のグレードが分かるようになっちゃったんだ。」


「能力値……?」


「そう。スキルは連続使用によってレベルが上がっていくんだ。ミズキは怪力、言語解読、体術の三つだから分かりにくかったのかもね。」



確かにこの能力だったら怪力・体術はトレーニングによって現実世界でも上がるし、言語解読は上がりようがないから分からなかったのも無理はない。



「うん。これはスキルじゃなくても慣れで変わりそうだしね。」


「ミズキのスキルはその三つなのですね。とても戦闘向きだと思います。エルナのスキルは一体何があるのですか?」



確かに正式に聞いたことないかも。食材鑑定、錬金、あとは炎魔法とかかな。



「私は結構器用貧乏なところあるんだよね。私は炎魔法、食材鑑定、錬金だよ。」



ビンゴだった。エルナもスキルの数が三つ。スキルは三つと決まっているのかな。



「なるほど……サバイバルの観点から言えばその三つはとても役立つように思えます。かなり冒険者向きですね。食材鑑定は森の中の食物が食べられるなものなのか判別できますし、錬金は生活用品を自然のものから作成できます。そして炎魔法、これは野営の時の火の確保。かなり重要かと思われますね。」


「そんなこと考えたこともなかったよ……拠点から出るようなクエストなんてやったこと無かったから。」



頭をポリポリと掻きながら答えるエルナ。エルナのスキルはこれでわかったけど、カイサのスキルはなんだろう。やはり三つなのかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る