第20話 雪花
「そうそう。カイサの事で気になってたことがあったんだよね。」
「私ですか?なんでしょう。」
不思議そうな顔をしているかカイサ。私が気になっているのはカイサの腰に下がっている武器のこと。
これは形状からして恐らく刀だろう。世間一般では刀はそう珍しくないはずだけど、この世界では違う。私の持っている刀も含めてこの世界には数本しか存在していないと前に戦士のアルさんに教えてもらった。
数本のうちの二振が今この場に存在していることになる。私の憶測が正しければ。
「その武器のことなんだけど……もしかしてそれって刀?」
「ミズキ……わかっていたのですね。」
カイサは腰の鞘からスッと刀を抜いた。鞘から離れる瞬間、まるで鈴の音のような澄んだ音がする。刀身は白に近い銀色。私の持っている刀の白銀よりも明るい色だ。
「この刀の銘は【
「ということはカイサは本家の人で実力がナンバーワンってこと!?」
「ええ、そうなりますね。」
「やっぱり相当強いんだ……私なんて手も足も出なさそうだね。」
「いえ……私なんてまだまだです。そういえばミズキも刀を使っていましたよね?」
やっぱり気づかれていたか。やっぱり刀は珍しいものなんだなと実感させられる。
「うん。コレなんだけど。」
私も腰から刀を抜いた。いつもの慣れた重みを右手に感じる。
「銘はなんというのですか?」
「あれ……そういえば知らないな。」
頭を捻ってみたけど聞いた記憶が無い。知らないのもなんだし後でハイダさんに聞いてみようか。
──あ、エルナ知らないかな。
「ねえ、エルナ。」
初めて呼び捨てで名前を呼んだ。なんか照れくさくてむず痒い。
呼ばれた本人と言えば顔を真っ赤にして私の方を見ていた。
「ちょ、ちょっと!エルナが呼び捨てで呼んでねって……」
「ご、ごめん!なんか恥ずかしくなっちゃって……」
えへへ……と笑いながら頭を掻く。
「それでどうしたの?ミズキ。」
私の名前も呼び捨てで呼ばれる。やっぱりなんかむず痒い。
「この刀の銘なんだけど、知らないかなって。」
「うーん、聞いた事ないなぁ。【魔剣】ってほ呼ばれてたことは知ってるけど……」
「そういえばアルさんもそんなこと言ってたね。」
私たちの会話を聞いていたのか、カイサが目を丸くして私の方を見ていた。
「魔剣……それって本当ですか。」
「うん。証拠は……ないけど。」
「証拠ならあるよ、ミズキ。」
「え?」
「その刀。ただの重みじゃないよね。」
エルナがニコッと私の方を見て笑いかけてくる。そうだった。私がわざわざこの武器を選んだ理由は。
「カイサ。この刀ちょっと持ってみるかい?」
「は、はい……」
おずおずと片手を差し出す。申し訳ないが、この刀はそれだけでは絶対に支えられない。しくじれば肩が抜けるだろう。
「持つなら両手がオススメかな。」
もう片手を掴んで両手を前に出すようなポーズを取らせた。そして、その上にそっと刀を横たえる。
もちろん全重量は掛けずに半分ぐらいの重みで抑えた……にも関わらず、カイサの腕は体の真ん中程まで一瞬で降下する。当然このままでは地面に両手がぶつかってしまうので、寸前で刀を持ち上げた。
「な、な!?」
困惑した様子のカイサ。
「これで分かってくれたかな。」
片手で刀を簡単に保持する私のことを見て驚愕の様子を隠せないみたいだ。怪力スキルとドラゴンのパワーで麻痺してるけど、キロに換算したらどのぐらいの重さになるんだろう。
この調子だったら投げつけるだけでもかなりの破壊力になりそうだな、と思いつつ刀を腰に装備し直した。
「はい……これは確かに魔剣です。ミズキがこれを片手で装備できるのが不思議で仕方ありません。」
「多分憶測なんだけど、私は元々怪力のスキルを持っているんだ。そのおかげかな?あとはドラゴンの力も影響してると思う。」
「ドラゴンの力ですか……そういえばミズキはドラゴンスレイヤーでしたね。私は詳しくは知りませんが……」
「そのことについて私もよく分かってないんだよね。今実感できるのは重みを感じにくい体になったおかげで人外のパワーを手に入れられたって位で、あとは自覚ないなぁ……多分今の私だったら人間の重さだったら余裕で片腕だけで持ち上げられると思うよ。」
咄嗟の思いつきでエルナの腰を抱えて持ち上げてみる。そしてそのまま自分の肩に載せた。まるでよくあるサーカス団の人達みたいに。
「わわわっ!ミズキ!ダメだよ!重たいよ!?」
「いやいや、全然。魔剣よりも軽いから余裕だよ。」
これは本心。まるで羽根のように軽いエルナ。この分ならカイサも持ち上げられそうだ。
「ほら、カイサだって持ち上がるよ。」
ヒョイッとエルナ同様に肩に載せる。人が二人乗ってもまだ余裕。バランスさえ保てれば何人でも載せられそうだ。
「なるほど……人外のパワー、これは侮れませんね。」
私の肩の上で考え込むカイサ。そうこうしている間に街の門が見えてきた。
さすがにこのまま街の中に入るのは人の目もあるのでまずいだろう。二人を地面にそっと下ろす。
▼△▼△
門番さんに挨拶をして、長い道のりを歩いてようやく元の街へと帰ってきた。
門をくぐり抜けると、一ヶ月あまりしか住んでいないはずなのにこの街並みが何故かとても安心する。
「さてと、とりあえず報告しにギルドに行こうか。」
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