第19話 新メンバー加入
急に国王にそんなことを言われ、一瞬頭の中が真っ白になる。手合わせ!?一国の主と?
そもそも手合わせを目的に戦ったことがない私はどうやって戦えばいいのかも分からない。実際私が戦ったのは絶対対象に襲われてからだから。
「じ、冗談ですよね……?」
「私は本気だ。」
三叉の槍を下段に構えて私を睨む。どうしたらいいのかな……
そもそもこんな場所で刀を抜いたら色々面倒なことになりそうだし……カイサの視線も怖い。
「どうした……?早く抜け。」
「で、でも……」
「来ないならこちらから行くぞ!」
突然何の前触れもなく、私の顔面に槍が突き出される。刀を抜く暇もない私はバックステップで躱そうと思ったが、それも間に合わない。
咄嗟の判断で槍の真ん中の先端を掴む。叉になっている部分を掴むことによってこれ以上槍が進まないように防ぐことが出来るはずだ。
「な……なんだと……」
腕をブルブルと震わせながらも、槍を一ミリも動かせなかった国王が呟く。私は怪力スキルに加えてドラゴンの筋力が上乗せされているらしい。
普通の人間では太刀打ちできないと考えるのが普通か。
「これでもお相手しますか?」
「いや、やめておこう……」
その言葉を聞いて槍の穂先からパッと手を離す。すると力のやり場を失った国王がバランスを崩して前へとふらついた。
「なんて力だ……人間ではない。」
私の腕を見ながら小さく呟く。その様子を見ていたカイサさんが何かを考え込んでいる様子だ。
「流石です。やはり私は……」
カイサさんは何やら決意を固めたような表情で真っ直ぐ私のことを見つめる。
「急な申し出で失礼は承知です。私を旅の仲間に加えて頂けないでしょうか。」
私に向かって深く頭を下げる。
急な申し出にかなり焦る私。
「ええ!?私は別に構いませんけど、国王様の許可を得なくてもいいのですか?」
この言葉を聞いた瞬間、ハッと言う顔と共に国王の方を見上げるカイサさん。するとハッハッハと豪快な笑い方と共にカイサさんの肩をバシバシと叩く。
「カイサがここまで惚れ込むとは相当だな。ん、行っておいで。この国はまだまだ手練がいる。カイサはまだ若い。もっと広い世界を見てくるんだ。」
「良いのですか!?……でも国の守護の役目が……」
想定外な返事を受け取ったのか、カイサさんがびっくりしたようなリアクションを取る。
「ハッハッハ。私もまだまだ腕は落ちていない。大丈夫だ。帰ってくる時はまた強くなった姿を見せてくれ!」
国王の許可を経て、私たちのパーティへと加わることとなったカイサさん。私の隣にいるエルナさんは何故か浮かない顔をしているけど、どうしたのだろうか。
「エルナさん、どうかした?」
気になるので聞いてみる。ここで気の利く人なら察しは着くのだろうけど、私はそこまで気の利く人ではない。
「ううん!なんでもないの。強い仲間が増えて心強いよ!」
何故か慌てている様子のエルナさんだったけど、本人が良しとしているならこれ以上追求する理由はない。
「私はこの国の軍団長をしておりました。どうかご指導ご鞭撻よろしくお願い致します!」
深く深く私の方へと頭を下げるカイサさん。正直なところ、軍団長の座に着いていたのなら私が教えることは皆無なのではないか。
この世界の軍団長の実力は一体どのくらいか計り知れないが、戦士になってたった一週間の私からしたらむしろこっち側が教わりたい気持ちでいっぱいになる。
「いやいや!私に戦い方のセオリーなんか全く分からないし、私が教えて欲しいぐらいですよ。」
「ご謙遜を。魔族を討伐した一撃必殺のあの技……才能無しにできるものではありません。」
「それじゃあ、私も教えられることは教えるから……カイサさんも私に戦い方のコツとかを伝授してくれたら嬉しいです。」
「はい!エルナさんもこれからよろしく致します!」
「うん。よろしくお願いします。」
二人が握手を交わす様子を見てるとなんだか安心する。これから仲良くやって行けるのかな。
▼△▼△
新たにカイサさんを加えて新たなパーティが完成した。国王から多額の報酬も受け取って気分は最高潮だ。
「ところでカイサさんは……」
私が質問しようと口を開こうとした時、カイサさんがハッとしたような顔をする。
「あ、あの……ミズキさんは私よりも歳上なので、さんを付けなくても大丈夫ですよ。それに敬語を使わなくても……」
「で、でも。」
「大丈夫です。是非、呼び捨てで敬語無しで呼んでください。」
「それだったら私もミズキって呼んでよ。仲間とは対等でいたいんだよね。ね、頼むよ。」
カイサさん……カイサの肩にポンと軽く手を置くとお互い目が合った。しかし、直ぐに逸らされたと思えば即座にカイサが頭を下げる。
「分かりました!ではミズキ……と呼ばせていただきます。」
「うん。お願いね。」
カイサに笑いかけるとエルナさんが私の腕に抱きついて私の顔を見上げた。
「エルナさんどうしたの?」
「あのね……私も呼び捨てで呼んで 欲しいな。」
「そうだね。そうしようか。」
何故か対抗するような様子を見せる。別に拒否する理由もないので承諾したけど。
「えへへ、ありがとう。カイサさんもエルナって呼んでね。」
「はい。では私もカイサと。」
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