第18話 謁見
女性の先導で城内へと入る。中も怪我人で悲惨だった。
「ある程度私が食い止めていたのですが、敵の人数が多すぎて何人かが城内に入ってしまったようです……早くしないと国王様が!」
「急ぎましょう!」
一本道を全力で走っていく。ドラゴンの体力を受け継いだ私でもついて行くのがやっとのスピードだ。
慌てているのか女性の注意力が散漫に思う。その証拠に何人かの魔人が女性へと斬りかかっていた。
「何っ!?」
女性が慌てて剣を構える。しかし、若干反応が遅いか。
腰の刀を抜いて魔人の首を分断する。あまり人を殺めることはしたくなかったが、せめて一瞬で苦しまずに天へと登って欲しい。
「すみません、助かりました。」
「いえ、後二人ほどいますね。少し待っててください。」
そう女性に伝えると、地面を蹴って同じ箇所で呆然と立っていた二人に向かって駆け出していく。
一人はレイピアのような細身の剣、もう一人は大型のまるで鉈のような剣だ。どちらもサビのようなものが見られ、恐らく上等の武器ではないように感じる。
「せいっ!」
気合いを入れて魔人二人に襲いかかる。一対一を
保つためにそのうち鉈の剣を持った方に蹴りを入れて吹き飛ばす。
一瞬レイピアの持ち主が動揺を見せたところで首を断つ。これもなるべく苦痛を味わうことがないように即座に。
「クソがっ!お前は一体……」
鉈を振り下ろそうとしたところを刀で受け止める。すると刀の切れ味に負けたのか、鉈が半ばから分断されてしまった。呆気に取られている相手には悪いが、同様に首を両断して終了だ。
血を振り払うために刀を下に向けて振り、腰の鞘に収めた。
歩いて女性の元へと戻ると、その女性は驚愕の表情で私の方を見ている。
「その腕、かなりの手練だとお見受けしますが……」
「いや、そんなことないですよ。実際戦士になってから一ヶ月経ってないし。」
「そんな……」
「信じられないですよね。でも信じて欲しい。」
ニコッと笑顔を向けると、少し顔を赤くした女性が視線を私から逸らしたような気がした。
「あ、そういえばお名前聞いてもいいですか。」
「そう言えばまだでしたね、私の名前はカイサ。この国で兵士をしています。」
「カイサさんね。よろしく。」
手を差し出すと、そっと私の手を握ってくる。カイサさん。その手は見た目に似合わず硬い印象で、恐らく沢山剣を振って来た事を想像できた。
▼△▼△
城内は全く敵の気配がなく、さっきの魔人で最後だったみたいだ。実際今目の前にあるのは謁見の間。最終目的地。
「ここが謁見の間です。どうやら魔人はもう居ないようですね。」
カイサさんがそっと扉を開くと、そこには完全武装した国王らしき男性の姿が。
ごつい三つ又の槍を持ち、全身を銀の鎧に包み玉座に座る姿はなかなか威圧感がある。
「陛下!無事でしたか!」
玉座の前に歩いていき膝を着いて低頭するカイサ。
「うむ、カイサ。苦労をかけたな。」
貫禄のある声でカイサを労う。その後視線が私の方へと向く。全てを見透かすような視線が私を射抜いた。
「そこに居る戦士よ。そなたも私の方へ。」
カイサさんについて行かず、入口に居た私を気遣ったのか声をかけられる。でもエルナさんが外で待っているんだ、私だけが国王に会うことは出来ない。
「陛下、あの者にはもう一人仲間がいます。」
「そうだったか。ではカイサ、その者も連れてここへ。」
「ハッ!」
深く低頭して、私の元へとやってくるカイサさん。早速エルナさんを連れてこよう。
▼△▼△
既に兵士の応急処置と毒の沼の処理を終えていたエルナさんは額に汗を流していた。
「ええっ!?私が国王様に謁見!?」
「はい。陛下が直々に会われたいと申されているのでご同行願います。」
「わ、分かりました。」
慌てて見なりを整えるエルナさん。国王に会うんだ、普通それぐらいはするのかな。私はなんもせずに一度会ってしまったし、何もしないことにする。
「あの、エルナさんでしたか。ミズキさんのような手練の方と同行できるなんて幸せですね。」
「私もそう思います。私なんかが天才のミズキさんと一緒にいてもいいのかなって思うことがありんです。」
「そんなこと気にしなくてもいいよ。だってエルナさんは私が天才だから一緒に居てくれてる訳じゃないでしょ?」
「それはそうだけど……」
不安そうに私のことを見上げるエルナさん。思わずその頭をクシャクシャと撫でてしまう。エルナさんはその感触をまるで楽しむかのように目を細めた。
「だったらそれでいいんだよ。これからもずっと一緒にいてくれたら嬉しいな。」
「は、はい!」
元気よく返事をする。会話をしているうちにさっきの謁見の間に到着し、カイサさんがピタリと足を止めた。
「さて、到着しました。陛下がお会いになられます。失礼の無いようお願い致します。」
「わ、わかりました。」
緊張の色が解けないエルナさん。そんなエルナさんを安心させるようにポンと肩を叩く。すると、力が入っていた肩からスッと力が抜けたように感じた。成功したようだ。
そんな様子を見たカイサさんが大きな扉を開いた。国王は先程と同じように玉座に座っている。
「二人をお連れしました。」
「ご苦労。では二人とも、此方へ。」
言われた通りに玉座の目の前まで歩き、先程のカイサさんと同じように片膝を着いた。作法はこれで合っているはず。
「急な依頼を受けてもらってとても感謝している。噂に聞いた通り、そなたは相当な手練みたいだな。ドラゴンスレイヤーは伊達ではないということか。」
「いえ、私なんてまだまだです。」
「謙遜するな。あのカイサがここまで饒舌になっているんだ。そなたの剣技に圧倒されたのであろう。」
「へ、陛下!」
顔を赤くして抗議の視線を向ける。その様子を見て国王はハッハッハと豪快に笑うと、鎧を鳴らして立ち上がった。
そのまま私に近寄ると、ポンポンと肩を叩いて呟く。
「そこまで腕が立つなら、私と手合わせでもしてみないか?」
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