第17話 新しい依頼
「依頼ですか……?」
「うん。ドラゴンスレイヤーの噂が瞬く間に広がって国の間でも噂されるようになったみたいなんだ。ミズキくんは一躍有名人ってわけ。」
「そ、そんな。私はまだ戦士になって一週間程度しか経ってないんですよ……?」
「それ、そこだよ。うちのギルドはとんでもない天才が居るって評判のギルドになったんだよね。それでとある国……から依頼が来たって訳。」
国レベルでの依頼、もしかして戦争とか……?大量虐殺の依頼とかだったとしたら私は絶対に手を出すことは出来ない。
私が戦うのは人間に被害が及びそうになった時だけと決めた。人間同士での戦いなんて真っ平御免。
「それで依頼というのはね。国を守りに行って欲しいんだ。」
「国を……?」
「うん。内容はこう。今、依頼国では大量の魔族に侵攻されている。今にも壊滅の危機みたい。だからそれをミズキくんに止めて欲しいと言うのが依頼内容だよ。」
「それは私一人で止められるものなんですか?」
「なんせドラゴンをやっつけた訳だし……普通の魔族ならもうミズキくんの相手にはならないと思うな。ドラゴンの防具もあるしね。」
「うーん……」
少し考えてしまう。もちろんひとつの国が滅びるのは大事件だし、放っては置けない。
「もう少し詳しく話を聞かせて貰えますか?」
「いいよ。依頼のあった国はね、魔族領地の境界線にあるんだけど境界線になってる山脈を掘り進んで国まで攻め込んできたんだって。」
「なんでそこまでして攻め込む必要があるんですか?」
「目的はおそらく……人族領の肥沃な大地だろうね。魔族領って基本極端に寒かったり暑かったりなんだ。だから過酷な環境下に無い人族領を定期的に襲ってくるって訳。もちろん侵略の為に。」
「侵略ですか……」
「そう。そのおかげで境界線付近の村から国にかけては魔族による被害が酷いんだ。もちろん死者も出ている。」
死者も出てるのか……私がそこに行くことによって少しでも不幸な人が減るのであれば、迷いはない。
「分かりました。行きます。」
「うん。決断してくれて嬉しいよ。……エルナちゃんはどうする?」
「私も行きます!ミズキさんとはパーティーメンバーですし……それに国が滅ぶかもしれないのに放っておけません!」
「決まりだね。それじゃあ、早速向かってもらおうかな。」
手にしていた書類に素早くハンコを押す。胸ポケットに入れていたギルドカードが発光し、クエストが更新されたみたいだ。
「行ってらっしゃい。」
「「行ってきます!」」
エルナさんと声を揃えて挨拶する。そして私たちは国を救うべく、長い道のりへと歩み始めた。
▼△▼△
土が踏み固められただけの森の道を進んでいく。私たちは辺りの気配を察知しながら魔族を探していたのだが全くもって魔族どころか、動物すらいる気配がない。
「奇妙なほど静かだね。」
「うん。戦争が起きてるって聞いたから……もっと激しい魔法とか使ってるかなって思ってたけど。」
結局何者にも出会うことなく、城へと着いてしまった。変に静かだ、嫌な予感がする。
「エルナさん、少し急ごうか。」
エルナさんの手を握って少し足早に城内に入る。門番は既に出払っていて門自体はがら空き。いとも簡単に侵入できた。
状況はかなり酷い。所々が毒の沼に侵食され、傷ついた兵士が地面に伏している。
「ミズキさん!向こうで煙が!」
エルナさんが指さした方向を見やると確かに黒煙が上がっている。私は思わず、腰の刀に手を掛けてその方角へと全力で走っていった。
視線の先では一人の女性が魔人と戦っているようだ。女性の方はかなりの手練だが、疲労の色が濃くやられてしまうのも時間の問題か。
どうにか私が距離を詰められるまで耐えて欲しい。
しかし、その願いも虚しく女性は剣を弾かれてしまった。ニヤケ顔で女性に剣を振り下ろす魔人。そうはさせるか。
「み、ミズキさん!?」
「間に合ええぇっ!」
驚くエルナさんを後目に全力で走り、腰の刀を抜いた。そして自分ができる最短の動作で何とか魔人と女性の間に潜り込むことに成功。
まさか剣を受け止められるとは思っていなかったのだろうか、目を見開いて私を見る魔人。
魔人を実際見たのは初めてだったが、見た目は人と同じ形だ。皮膚の色が若干青白く耳も尖っている。実際に本で読んだのと見た目は同一だった。
しかし、力は圧倒的に弱い。筋肉質な見た目から想像もつかないほどに軽い剣だ。あっさりと弾き返して腹部に思い切り蹴りを入れる。
見事に吹き飛ぶ魔人。さすが、ドラゴンの力は伊達じゃない。
「大丈夫ですか。」
「あなたは……」
剣を拾い上げて腰に収めるこの女性はやはり、かなり手練の印象を受ける。
長い紺の髪を一つにまとめ、簡素な鉄鎧を装備していた。そして持っている剣は……あれ、これは刀では無いか。
「私はミズキ。依頼で戦闘の支援にきた。向こうで兵士の治療をしているのがエルナさん。」
「支援ですか……助かります……」
ヨロッと倒れ込みそうになる女性を支える。
「大丈夫ですか。」
「はい、まだポーションのあまりがありますから……」
腰にぶら下げていた瓶の中身を一気に呷る。するとダメージが残っていた女性の表情が回復したように思えた。
「まだ、魔人が数人潜んでいます。行かなくては……」
ポーションで回復したとはいえ、完全に回復した訳では無いのだろう。少々足取りが重く感じるその姿を放っては置けない。
「エルナさん!兵士の事は任せてもいい?」
「大丈夫!回復アイテムは沢山持ってきたから!行ってらっしゃい、気をつけてね!」
グッとエルナさんにサムズアップしてみせると、女性について行く。向かう先は城内だ。
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