第14話 ドラゴンスレイヤー

翌日、私はハイダさんに呼ばれたのを思い出して身支度を整え始めた。と言ってもクエストに出かける訳でもないので私服に刀を装備するだけの簡単な服装。


胸ポケットにギルドカードを入れていざ出発。目的地は昨日入った格納庫。


一体何の用なんだろう。検討もつかない。


私がドラゴンを倒したことが街中に知れ渡っているのか、噂話が広がっている上に視線が耐えない。やっぱりパーカーのフードがないと落ち着かないな。


どうにかしてパーカーを返して貰えないだろうか。まさか処分してないよね……



───あれは大事なものなんだ。



のんびり歩いていると目的地へ到着。ギルドの入口へ入ってハイダさんの元へ。



「おはようございます。ハイダさん。」


「おはようミズキくん!来てくれたね。」



ハイダさんはもう一人の窓口の女性に話しかけると受付のカウンターから出てくる。



「待ってたよ。」


「お話ってなんですか?」


「それは歩きながら説明するね。」



ハイダさんは私の腰に手を添えながら道を誘導する。



「話っていうのはね、変なこと聞くようだけど……ミズキくんってドラゴンを討伐してから体に異変とか感じたりしないかな。例えば……力が急激に上がったとか、疲れを感じなくなったとか。」


「疲れ……そうですね、特には……」



思いもよらぬ事に驚く。



「本当に……?うーん、それじゃあ違う聞き方をするね。君、ドラゴンを道具無しで一人だけで持ち上げたって本当?」


「え、それは本当ですけど……」


「なるほどねぇ……」



腕組みをしてうーん……と唸るハイダさん。なんか問題でもあったのだろうか。



「ちょっとミズキくん。私は今、魔法を使うよ。右手の指先から。それを頭の中でイメージし続けてみてね。



一体なんのことやら。魔法を使うって言ったよね。


ハイダさんは私の手の甲に指先を当てる。まさか私に魔法を当てるつもりなのか。



「ち、ちょっと!待ってください!私に撃つんですか!?」


「うん。そうだよ?」


「どうしてですか……?」


「確かめたいことがあるんだ。大丈夫、怪我はしないように微弱な魔力で撃つから。」


「分かりました……」



ハイダさんが言うんだ。きっと何か理由があるに違いない。魔法を撃つ……なんで予め予告していたんだろう。



「いくよ。」



合図とともに指先から魔法。水魔法だろうか。水色のなにかが発動したかと思うと、私に当たるまえに瞬時に消滅。


私の体の表面から虹色のまるでシャボン玉の表面のような透明な膜が出現して魔法を消してしまったのだ。



「やっぱりそうだったみたい。」


「ハイダさん。こ、これは……?」


「【対魔法無効化障壁】だよ。」


「な、なんですか?それは。」


「どんなドラゴンも持っている魔法対策みたいなものかな。」


「なんで私がそんなもの持ってるんですか!?」


「それはね……ミズキくんがドラゴンスレイヤーだからだよ。」



ドラゴンスレイヤー。聞いたことがある、と言っても現実世界のフィクションだけど。確か、ドラゴンを倒した者の総称。


でも私がドラゴンの障壁を持っていたことは理由にならない。まさかドラゴンから受け継いだとでも言いたいのか。



「それと何か関係が?」


「ドラゴンを一人で尚且つ剣のみで倒した人はドラゴンの力を全て受け継ぐことができるとされているんだ。だからちょっと試させて貰ったんだけど……どうやら本当らしいね。」


「だからアルさんがびっくりしてたんだ……」



これなら合点が行く。アルさんはただの怪力スキルだけではここまでのパワーは出せないって言っていた。私がドラゴンを持ち上げられたのはドラゴンの力のおかげ……?



「伝説は本当だったんだ……これは大発見だね。」


「今までに例はいなかったんですか?」


「もちろん。ドラゴンを倒すのは一人じゃ無理だもん。最低でもパーティで行かないとダメだからね。ミズキくんは異質な例。」


「異質……」



思わず、自分の手を見つめてしまう。こんな力を手に入れた自分が恐ろしい。こんな力私じゃなくてもっと他の人に……



「ハイダさん。この力って誰かに譲渡出来たりしないんでしょうか。」


「どうして……?戦士だったらもっと喜ぶべきだよ?」


「いえ……私は怖いんです。ただの人間だった私が急にこんな力を手にするのが……ドラゴンの力なんて普通じゃない。制御できるのだろうかって。」



怯えていると、ハイダさんの手が私の肩に置かれる。



「ミズキくん。この力がミズキくんの元にやってきて私は良かったって思うよ。力に怯えない人ほどこの力を悪いことに使ってしまいそうだからね。その点ミズキくんはすごく優しいから……その力と付き合うためにも、いい話があるんだ。」

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