第3話 フードを取ると?

得意武器、得意魔法、固有スキル、希望する職業。どの欄もどう埋めていいかも分からない。埋められた項目は性別と年齢、名前だけ。あとはエルナさんが埋めてくれた住所。



「うーん……」


「どうしたんですか?」


「得意武器と魔法がわからないんです。」


「得意武器ですか。これは使ってみないと何とも……そうだ、ハイダさん!訓練所を使ってもいいですか?」


「いいよー!誰も居ないから自由に使っちゃって!」






▼△▼△



「はい!それじゃ、色んな武器を使ってみましょう!」


「よろしくお願いします。」


「まず、初めにポピュラーな武器の剣ですね。私もこれを使っています。」



壁に立てかけられている武器から何の変哲もない西洋剣を手に取ると左右に切り払う。手慣れているように見えるその仕草に思わず見入ってしまう。




「はい、ミズキさんも試しに振ってみて下さい。」




私にも西洋剣の柄を差し出してくる。柄を握りしめるとエルナさんが手を離す。すると少しの重量が私の手に掛かってきた。


正直な感想、思っていたよりも重くない。プラスチックのおもちゃの剣を振っているよう。いくら私が力仕事に自信があるからって言っても、これはいくらなんでも……



「軽いですね。」


「ええっ!?それ、結構な重量があるハズなんですけど。」


「え?」



思わず剣を見つめてしまう。確かに全ての部分が金属で出来ていて見た目は重そうだけど大したことは無い。



「他の武器ってありますか?出来ればもっと重いヤツがいいです。」


「これより重いものだと……コレとかどうでしょう。」



エルナさんが指差したのは大きめな刃がついた斧。立てかけられているそれを握り締めて持ち上げる。


体感重量は五百ミリリットルペットボトルぐらいの重さ。これが本当に斧なのかな。



「それはかなり重いはずなのですが……振れます?」


「多分……」



エルナさんから少し離れて横に真っ直ぐ斧を振り払う。ブォンという重い風切り音が響いて空気を切り裂いた。そして、空中でピタリと斧を止める。



「それを振るなんて……ミズキさんは相当力持ちなのですね。」


「……すみません、もう少し重い武器は無いですか?」


「ええ!?……流石にそれより重い武器だと、これぐらいしか……」



エルナさんが指差した先には無造作に地面へと置かれた巨大な腰鉈のような形の刃が付いた大剣。しかもかなり分厚い。これなら期待出来そう。



「も、持てるんですか……?この大剣は扱える者が誰一人居なくてお蔵入りになった物なんです。化け物レベルの重さだって聞きいたことが……」



柄を握ってグイッと持ち上げた。体感的には私の趣味で部屋に飾ってあった模造刀の重さに似ている。振ることにも全く問題ない重さ。



「これって貸し出してもらえるんですよね。」


「は、はい!」


「これにします。分類は……大剣ですね。」



目をぱちくりさせながら私の方を見るエルナさん。それにしてもなんで私はこんなに大きい剣を振れるのだろう。


向こうの世界の私は確かに筋力トレーニングを日課にしていて多少の筋力はある。でもこの大剣は目算三十キロ位はあると見える。そんな大剣を片手で持ててしまうなんて……






▼△▼△



「えーっ!?貴方、それを装備できるの?」


「は、はい。」




ハイダさんにも同じ反応をされた。そんなに凄いこととは思えないけど。




「貴方、書類持ってこっちに来てくれる?エルナちゃんはここで待っててね。」


「はい、わかりました。」




ハイダさんに連れられて更衣室のような所へ。ハイダさんは私の体をじっくりと興味深そうに眺めていた。




「な、なんでしょうか。」


「貴女、本当に女性?」


「へ?」


「女性にしては……失礼。」




突然、全身をまさぐるように揉まれる。



「な、なんですか!?」


「背も大きいし、ガタイもいい。でも……ちゃんと女性だね。」



最後に胸を揉まれて、満足した様子のハイダさん。



「一体なんだったんですか?この行動に意味は!?それと最後のはなんですか!」


「んー、私の知的好奇心かな。正直な話、最初私は貴女のこと男の人と勘違いしていたんだ。身長も高いし、声も低い。そして、この顔ね。」



パッと被っていたフードを取られ、私の顔が晒される。正直な自分の顔は大嫌いだった。


フードを取って歩いていると街や学校に居る言わばリア充にヒソヒソと噂されるから。




「貴女、かなりの美形だね。モテたりしなかった?」


「い、いえ……陰口を言われることはありましたが……」


「うーん……多分それ、陰口じゃないよ。むしろ噂になってたんじゃない?かっこいいイケメンがいるって。」


「え!?」


「それはともかく……装備、決めよっか!」




まるで着せ替え人形のように色々な装備を試される。そして最終的に決められたのは、左側に重点的に黒みがかかったゴツいプレート鎧。右側には剣を振りやすいようにガントレットのみの最低限の装備。服は青を基調としたものだ。




「よし、こんなものかな。」


「ありがとうございます!……あの……パーカーは返してもらえないんでしょうか?」


「こんなに美形なのにフードなんか被っていちゃ勿体無いって!さ、行った行った!」




半ば追い出されるように更衣室から退出。出口のすぐ近くにはエルナさんが。




「あ、ただいま帰りました。」


「え!ミズキさんなんですか!?」


「は、はい。」




目をパチパチさせて私のことをじっくりと眺める。そして顔を赤くさせると俯いてしまう。



「どうしました?」


「いえ……あの、すごく似合ってますよ!」


「ありがとうございます。」



つい、お礼を言うとハイダさんも更衣室から出てくる。




「どうだい、私の見立ては!カッコよくなったでしょ?それにいつまで二人は敬語を使いあってるの。同い歳なんだから、もっと親密にならないと。」


「ミズキさんも十七歳なんですか!?」


「は、はい。」


「すごい……同い年なのに私より大人っぽい……」


「あの……せっかくなんで敬語は無しで。これからはタメ口でいいよ。」


「わかりました……じゃない、わかった!それじゃあ、書類の続き書こう?分からないところはある?」


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