火の子

春風月葉

火の子

 ちっぽけな命の火を、消えかかった蝋燭の灯りを、そっと両手で守る。‬

 そうやって昨日も、今日も、そしてこれからも、消えないように生きていく。


 生まれたときから身体が弱かった。少し歩けば息が上がり、少し走れば倒れてしまうくらい。かけっこがしたかった。ボール遊びも。でも叶わない。私には、できない。

 ある日、夢をみた。外を自由に走る夢。優しい夢だった。

 夢は夢のまま、私は私のまま、身体だけが大きくなった。河川敷、走る子供に嫉妬して歩いた。


 私は走った。地面を蹴る度に身体は悲鳴をあげた。胸が痛い。喉が熱い。しかし、心は歓喜しているのがわかった。


 ちっぽけな命の火、強く赤く燃える。やがて蝋燭は消え、闇だけが残る。

 そうやって今日、一つの灯りが消えた。

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火の子 春風月葉 @HarukazeTsukiha

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