火の子
春風月葉
火の子
ちっぽけな命の火を、消えかかった蝋燭の灯りを、そっと両手で守る。
そうやって昨日も、今日も、そしてこれからも、消えないように生きていく。
生まれたときから身体が弱かった。少し歩けば息が上がり、少し走れば倒れてしまうくらい。かけっこがしたかった。ボール遊びも。でも叶わない。私には、できない。
ある日、夢をみた。外を自由に走る夢。優しい夢だった。
夢は夢のまま、私は私のまま、身体だけが大きくなった。河川敷、走る子供に嫉妬して歩いた。
私は走った。地面を蹴る度に身体は悲鳴をあげた。胸が痛い。喉が熱い。しかし、心は歓喜しているのがわかった。
ちっぽけな命の火、強く赤く燃える。やがて蝋燭は消え、闇だけが残る。
そうやって今日、一つの灯りが消えた。
火の子 春風月葉 @HarukazeTsukiha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます