屋敷

近所にあばら家に住むお婆さんがいる。

小さな二階建ての家。

周りにはごみ袋。

中もごみ袋だらけみたい。


この家が建った時、どんなにピカピカだっただろう。

父親が30年ローンで建てたのかな。

ペンキも塗ったばかり。

畳もイグサの香り。


ある日、その畳の繊維の一本が切れ、ぴんと天井に向かってけば立つ。

母親はそれを切って捨てる。

何も起こらなかったように、元に戻ったように見える。

だけど家は少しづつ老いている。


あのお婆さんも昔ははにかむ少女だった。

恥ずかしがり屋の、人見知りする女の子。

何があったのか。

何もなかったのか。

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