絵を盗まれる

ある日、俺は絵を盗まれた。

いつものように鉛筆を持ち、紙の前に座ってもどうしていいかわからない。

う~んう~んと唸っても何も出てこない。

こんなはずない。

いつもはスラスラなにか描いてたはずだ。

さては俺が描くものを盗んだ奴がいるな。

俺は部屋に残る犯人の残り香に気が付いた。

カメムシの匂いだ。


俺は家を飛び出し、公園を通り抜け、通りを横切り山に入った。

でかい切り株の上でカメムシは一服してた。


「おい!お前、俺の絵をどこにやった」


最初カメムシはとぼけようとしたが、俺の怒り具合を見てまずいと思ったらしい。

絵はゴミ捨て場に捨てたと白状した。

畜生、俺の絵はゴミだっていうのか。

カメムシを踏みつけ、ゴミ捨て場に走る。


「おお、あったあった、これだ」


俺は自分の絵を抱きしめた。

誰が何と言ったって、俺はこの絵が好きなんだ。

だがすぐそばに誰かの違う絵が捨ててあった。

俺は二つの絵を見比べる。


「こっちもいいな」


とりあえず両方を持ち帰った。

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