チャップリン
チャップリンは1913年、カーノー劇団員としてアメリカに渡った。
マーク・セネット「面白いやつだ、うちの映画に出ないか」
1914年デビュー。
この年、第一次世界大戦がはじまる。
チャップリンは一年で35本の短編映画と一本の長編映画に出た。
一年で大スターになった。
最初の頃、映画のチャップリンは怖い人だった。
意地悪でけちんぼで攻撃的だった。
貧乏で石をなめて空腹をしのいだ子供時代。
大好きなお母さんは気が狂っていた。
お父さんは亡くなっていた。
多分両方アルコールのせい。
劇団では酔っ払いの真似をして笑いをとった。
おなかが減って、叩かれて、世の中が敵ばかりに見えただろう。
でもカルフォルニアの空の下で映画を撮っているうちに彼は変わった。
自分で監督も始めた。
「チャップリンは一本に時間をかけすぎる」
セネットが文句を言うと、喜劇女優メイベル・ノーマンドが彼をかばった。
「そうじゃない、彼はすばらしいわ」
映画のチャップリンはだんだん優しくなった。
公園で女に恋して、警官から逃げ回り、犬や子供を助けることもあった。
正義の味方とは言えないけど、そこそこ頑張る男。
チャップリンはインタビューで夢を語った。
いつかナポレオンとハムレットと○○を撮りたいんだ。僕は監督だけして。
第一次世界大戦が泥沼化して、誰かが言った。
「チャップリンは兵役拒否者だ」
チャップリンは「担へ銃」を撮った。
喜劇映画で最初に戦争を扱った。
エドナ・パーヴィアンスは従軍兵が「担へ銃」を観て泣いていたと書いている。
故郷の家族から兵士たちに来た手紙が配られる。でもチャップリンにだけ無い。
仕方ないのでチャップリンは隣にいる兵士の手紙を盗み見る。
それを見た観客の兵士は涙を浮かべた。
兵士たちは言った。「チャーリーは戦場で生まれたんだ」
僕は思うんだ。
今の戦争映画は戦争を知らない観客に戦争を疑似体験させようという、戦争アトラクションと化している。
なんなら観客をシェルショックにしようという意図すら感じる。
これはつまり地獄の説教だよ。
チャップリンは逆に戦争をコミカルに描いて、戦争に行った人たちに安らぎを与えた。
さて僕は今、チャップリンの三つの夢が何だったのか思い出そうとしている。
ナポレオンとハムレットと・・・なんだったっけ?
リア王?
ロミオとジュリエット?
ポヴァリー夫人?
チャップリンは常にシンプルだった。
きっとシンプルな物語だ。
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