結論と新住居での朝
零・・・零・・・零・・・っ!!!
何度も何度も何度も愛しい彼の名前を呟きながら、家中を探しまくった。
靴があるか、衣服があるか、とにかく零の私物があった所を漁りまくった。
無い、ここにも無い、あそこにも無い、こっちにもこっちにもこっちにも・・・・・・零も使っていた物は、殆ど家の中から消えていた・・・。
私に、絶望を知らせた紙が置いてあったリビングに戻り、呆然と立ち尽くしていた・・・。
どれだけそうしていたかも分からない・・・玄関のドアが開く音がして、我に返った。
そして、二咲がリビングに入ってきた・・・。
その二咲も・・・・・・、
「零さん零さん零さん!!?どこ?!どこにいるのよ!?!隠れてるんでしょねぇ!!出てきてよ私怒ってないからぁ!??」
数分前の私の様に、目の前でこの酷い現実を受け入れられずにいた。
酷い顔をしている・・・こんな顔じゃあ、決して親しまれるアイドルなんて言う事はできない・・・。
・・・って、私も人の事、言えないわよね・・・。
私だって、そうだったに違いないんだから・・・。
「二咲、落ち着いて・・・。」
「零さ・・・・・・落ち着く!?何言ってるのママ?!?私は落ち着いて・・・!??」
「二咲!!」
「??!・・・・・・ママ・・・。」
力が抜けたのか、ストンッと座り込む二咲。
私も一緒になって座り込み、真正面から目を見て話す。
「大丈夫よ二咲。」
「大丈夫?何が・・・?」
私は、考えた・・・零が何でこんな事をしたのか・・・。
そして考えた末に、答えに辿り着いた。
「零はね・・・・・・きっと、また買い物にでも行ってるのよ。」
「・・・買い物?」
「そう、この前みたいに、私達の為に美味しい食事を作るために、買い物に行ったのよ!」
そうに違いない・・・じゃなければ零が、こんな事するはずないもの・・・。
「衣服や靴は、きっと古くなったからゴミにだしたのよ。どうりで探しても見つからないわけだわ。」
イケナイ零・・・また勝手に外に出るなんて・・・・・・。
「だから、待っていれば帰って来るわ。大丈夫よ!」
「・・・・・・ママ・・・」
私の考えは的を得ていると思う。
今の話を聞いて、きっと二咲だって・・・それしか無いと思ってくれているはずよ。
私に目を合わせながら、二咲が口を開いた。
「・・・確かにそう!そうに違いない!凄いママ、そこまで考えきるなんて!!」
「そうでしょう!零の行動は全部把握してるんだから❤そのくらいできないと、零の妻なんて名乗れないわよ❤」
一気にアイドルらしい笑顔になる二咲。
お互いの気が和らいだ所で、本題に入ろうかな。
「でね、このまま待ってるのも不安だから、零を探しに行きましょう。」
「うん、そうだね。ダメだよね、勝手に外に出て・・・ちょっとだけお仕置きした方が良いんじゃない?」
「う~~んそうねぇ、ちょっと可哀想だけど・・・イケナイ事したんだから、その方が良いかもしれないわね!・・・お仕置き❤」
「うん❤・・・でも、どうやって探すの?ってママ、零さんのスマホに掛けてみた方が良いんじゃない?」
「それが何度も掛けたんだけど、電源が切れてるみたいなの。全然繋がらなくて困ったわ。」
二咲の前でもう一度掛けてみるが、やっぱり繋がらない。
充電し忘れるなんて・・・おっちょこちょいな零❤
「そっか~、じゃあ仕方ないね。それじゃあ、直接迎えに行くしかないね。」
「そうね・・・その前にしばらく仕事は休むって連絡しとかなくちゃ!」
「あっ!私は学校にも連絡しなきゃ!」
二人でスマホを手に、電話を掛けまくる。
こんな時に仕事なんてやってる場合じゃ無いの。
私達の全てである「零」を迎えに行かなきゃいけないんだから。
電話を終えた私達の表情に、もう焦りは無かった。
絶望なんて言葉、必要すら無かった事に気づいたから・・・・・・受け止めきれない現実なんてものも無かった。
零を迎えに行って、帰ってくれば・・・ほら、いつも通り❤
貴方が傍にいる日常・・・私達の幸せな毎日。
「待っててね、零さん❤」
「今、迎えに行くから❤」
愛する人を迎えに行く二人・・・・・・どこにもおかしい所なんて無い。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「・・・ん・・・ふぁ、・・・あれ・・・?」
目が覚めて最初に飛び込んできたのは、見慣れないぬいぐるみだった。
こんな可愛らしいぬいぐるみ、持ってた覚えは無い。
こんなおっさんの俺が抱いて眠るか?
・・・考えただけでも気分が悪くなりそうだ・・・。
体を起こして、自分のいる部屋を見渡す。
数秒の間を置き、昨日の事を思い出した。
「そう、だった・・・昨日家を出て、それから兆胡ちゃんと京胡ちゃんの家に・・・・・・」
昨日から、この昇家にお世話になる事が(強制的に)決まったんだった・・・。
お菓子を食べて、ジュースで乾杯して歓迎してくれてたな。
思い出していると、お腹が鳴った。
「そういえば、まともな食事は家を出る前にしか食べてなかったな・・・。」
その後に食べたのはお菓子くらいで、そのままこの空き部屋を借りて眠ったんだった・・・。
今何時なのか・・・外の明るさからして朝方くらいだろうと思い、壁に掛けられた時計を見る。
時刻は、朝の6時を迎えようとしていた。
「・・・いつも通りの時間に起きたな。・・・癖がついてるから仕方ないか・・・。」
伸びをして立ち上がり、ぬいぐるみの横を通り過ぎて部屋から出て行く。
出てすぐ目の前にある階段を降りて行くと、何やらお味噌の良い香りが鼻に入り、またお腹が鳴った。
階段を降りたら、昨日俺を歓迎してくれた場所であるリビングに顔を出した。
「あっ❤おはよう零さん、良く眠れた?」
「おはよう、兆胡ちゃん・・・。眠れた・・・かな。」
「おはよっ、零さん❤まだ朝早いのに、もう起きて来たの?」
「京胡ちゃん、おはよう・・・。うん、いつもこのくらいの時間に起きてたから、癖で・・・。」
顔を出した俺を迎えてくれたのは、制服の上からお揃いのミントグリーンのエプロンをした兆胡ちゃんと京胡ちゃん。
見慣れない光景に、寝起きの脳・・・一瞬思考が停止しかけた・・・。
二人は朝食を用意していた様だった。
「後はお皿に移して、完成~❤」
「運ぶの手伝うよ。」
「いいのいいの❤零さんは座って待ってて❤」
悪いと思い、手伝うよう言ったが椅子に座らされてしまう。
朝から上機嫌で朝食の用意をする二人を見る。
いつもは自分が用意している朝食を、誰かに作ってもらうのは何だか新鮮な気がして・・・・・・小さく微笑んだ。
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