第一章14話 もう一人の異質な魔族と出会いました

グルーテンとグラーツィエと別れた後は、第三魔王大隊の訓練場へ行くこととなった。

そこでは、訓練をしている多くの魔族と、以前見たデミと以前もいた寂しそうな異質な魔族がいた。


「では、ターダノは今日はここで観る訓練をするのだな?」


「はい!ただ、ちょっと気になっている魔族の方がいるので話しかけても良いですか?」


「おぉ、そうか、この前言っていたもう一人だな。分かった、気をつけるんだぞ」


「分かったよ、お父さん!」


ターダノは訓練場に降り、大きな魔族の少し空いた隙間をするすると小さな体ですり抜けていった。

そして、1分もかからないでターダノは異質な魔族のもとにたどり着いた。


「ねぇ、君はなんで訓練していないの?」


「え・・・ねぇ、君!僕が見えるのかい!?」


「う、うん、見えるよ」


尋常ならざるほど目を見開いた三つ目の魔族が僕を凝視する。


(いや、そんなに3つの目で凝視しないで欲しいんだけど・・・)


「本当に見えるんだ!!

凄い!僕が見えるのは本当に!

前魔王様から直接特定依頼を受けて3年ほど前に忍び込んだは良いんだけど、本当に誰も僕を見てくれないから、なんの意味があるのかな?って今更ながら疑問に思っていたんだよね〜

てか、ダノンゾルデ様もターグリフ様も酷い、見えてるのに見えてないふりなんかしちゃって・・・流石に他の魔族に見えないのはいいけどさ。」


「え、前の魔王様から特定依頼を受けてここに入ってるんだ!

凄いね!でも、多分さ、お父さんとお母さんからはキミ、見えてないと思うよ。」


「えぇっ!そんな!マジですか・・・あぁ・・・僕ってそんなに気づかれないんだ・・・」


とても悲壮感が漂っている魔族の背中をさすり、慰めながら、ターダノはその魔族の名前を聞いた。


「そう言えば、キミってどんな名前なの?」


「僕?僕はエアって言うんだ。」


「エアか、なんとなくかっこいいね!」


「えっ!?そ、そう?

いやー、かっこいいとか言われたことなかったけど、名前を褒めてくれるのは嬉しいな。

ね、ねぇ、ターダノ君だっけ?僕の友達になってくれないかい?」


「い、良いけど、僕で良いの?」


「良いよ!だって、僕、はっきりって前魔王様と両親しか見えてなかったみたいだから、僕を見えるキミが友達になってくれるとすごく嬉しいんだ。」


「そうなんだ!じゃあ、今日からよろしくね、エア。」


「うん、よろしく、ターダノ。」




ちなみに、3年前前の魔王はたまたま各魔王大隊の中に裏切り者がいるのではないかと思い、誰もいない空間でなんとなく独り言を呟いたのに、たまたま全く見えないエアが目の前に居合わせた。

そのため、両親以外と話したことがなかったエアは勝手に勘違いして、勝手に特定依頼だと考え、たまたま忍び込んだのが第三魔王大隊だったというだけであった。

そのため、実のところ、エアは前魔王からは全く見えておらず、エア本人は知らないが、現時点でエアが見えるのは両親とターダノの3人だけだった。


そんなステルス超特化型の魔族との出会いで、今後のターダノの人生は大きく変化するのであった。

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